遠隔診断による実用化DNAの異常なメチル化を防いで細胞のがん化を防ぐ。り、そのまま放置するとがんになってしまいます。私たちはがんを抑制する遺伝子(p53遺伝子、RB遺伝子その働きによって、むやみやたらにがんにならずに済んでいます。しかし、がん患者では、がん抑制遺伝子が正常に働かなくなってがんを発症することがあります。これは、遺伝子の本体であるDNAの塩え基きに異常なメチル化*が起こり、がん抑制遺伝子のスイッチがOFFになることが原因だと考えられています。メチル化異常を防いでがん細胞の増加を抑える薬はすでに実用化され早期がん塗り薬治療のにゅうとうしょくばんしょう器きと、間葉成分である歯し乳頭と歯しう小囊のから成ります。エナメル器からはうしゅ層)や歯し槽そ骨こつ(あごの骨)などが形成さンターでは、まだマウスを使った実験の段階ですが、人工的に「歯し胚は」をつくって、それをあごの骨に移植して歯の再生を促す研究をしています。歯胚とは、いわば歯の卵です。私たちの歯は、あごの骨のなかにあるときは、生えているときの形ではありません。丸っこい歯胚がエナメル質や象牙質に成長して歯になって、生えてくるのです。歯胚は、上皮成分であるエナメルい ういう ん エナメル質が、歯乳頭からは象牙質と歯し髄ずが、そして歯小囊からはセメント質(象牙質の表面にあるごく薄いれます。理研では、マウスの胎児に由来する幹細胞から歯髄の上皮細胞と間葉細胞をつくって、それを「再生歯胚」としてマウスのあごの骨のなかに移植、萌ほつ出させる実験を行っています。これを将来はiPS細胞でヒトに応用できるように、研究が進められています。など)を生まれながらにもっており、身体の細胞では、遺伝子が傷ついたりすると細胞が異常増殖することがあていて、小児がんの治療に使われる「アザシチジン」が有名です。こうした薬がお口に応用されるようになれば、早期の口腔がんを予防・治療する塗り薬になると思われます。将来的には、歯科医院で撮影したお口の粘膜の写真をもとに、遠隔地の専門医がオンライン診断をして、「がんの前段階の病変(白は板症など)が見つかったので、この薬を塗っておきましょう」と処方されるようになるかもしれません。もしくはメチル化異常を防ぐ薬が配合された洗口液が市販されて、「うがい薬でがん予防」が日常的になることも考えられますね。39再生歯の萌出移植豊澤歯胚上皮細胞歯胚間葉細胞(Ikeda E et al. Fully functional bioengineered tooth replacement as an organ replacement therapy. PNAS 2009.を参考に作成)*DNAを構成する4つの塩基(A、T、G、C)のなかのC(シトシン)についている水素がメチル基(CH₃)に変化すること。2023年6月号再生歯胚の移植再生歯胚
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