長期安定インプラント治療
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1章 インプラント治療における解剖学および外科学8はじめに1 本章では、インプラント手術の基本となる切開およびそのデザインについて、デンツプライフリアデント社製インプラントシステムに即した内容も加味しながら、基本的な部分について述べていきたい。切開の基本手技21.メスの選択と使用法 メスは、切れ味の良いディスポーザブルメスを使用する。柄ごと使い捨てのタイプが準備や廃棄時の安全面ですぐれているが、コスト面の理由から替刃メスを使用してもよい。手術野が広範囲であったり、2ヵ所以上を同時期に手術したりする場合は、途中でメスの切れが悪くなってくるので、そのときは迷わず新しいメスに換えるべきである。口腔内で使用するメスは小型なものが適しており、通常使用する種類は、No.15(小円刃刀)、No.12(弯刃刀)、No.11(尖刃刀)である(図1‐1‐1)。そのうち、インプラント手術で使用する代表的なメスは、No.15が粘膜および骨膜の切開、No.12が歯肉溝内切開に対してであり(図1‐1‐2)、No.11は膿瘍切開などの刺入操作に用いるのが主で、インプラント手術での適用は考えにくい。審美領域などでより細かな操作が求められる場合は、手術効率は劣るが、No.15を小型化したNo.15cや眼科用メスから転用されたマイクロメスを使用する方法もある。いずれのメスを使用するにせよ、インプラント手術は術野が小範囲であるため、粘膜内での刃先の位置をよく指先に感じ取りながら、周囲の軟組織の副損傷に十分注意して扱うべきである。また、創の治癒を良好にするため、刃先を粘膜面に対してできるかぎり垂直になるよう切開することを心掛ける必要がある(図1‐1‐3)。2.切開デザインのシミュレーション 当然であるが、手術を開始してから切開デザインを思案しはじめてはならない。手術時間が長引くばかりか、その後の操作にも試行錯誤的な迷いが生じ、流れの良い確実な手術を完遂できなくなる。このようなことを防ぐためには、術前に模型上で切開デザインを計画し、事前にシミュレーションしておくとよい。フラップの血流が良く、縫合が単純化できて短時間で済み、瘢痕を残しにくく、周囲の歯や組織に悪影響を及ぼさない切開デザインを手術前に十分検討しておくことが重要である。さらに、メスの種類、神経や小帯など周囲の解剖学的状況、骨形成や軟組織形成などの併用手術の有無、インプラント埋入を歯肉貫通型(transgingival、1回法)にするの河奈裕正(Hiromasa Kawana)慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室 診療副部長・専任講師東北大学歯学部卒業(社)日本口腔外科学会指導医・専門医・評議員、日本顎顔面インプラント学会指導医・評議員、(社)日本口腔インプラント学会評議員インプラント手術を成功に導くための切開とそのデザイン

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