長期安定インプラント治療
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5章 低侵襲治療を達成するためのプラットフォームシフティング76プラットフォームシフティングとは1 プラットフォームシフティングとはLazzaraら1)が提唱するPlatform Switching Theoryの同義語で、近年たいへん注目を浴びている概念である。従来の2回法インプラントの場合、補綴処置後にインプラント周囲の歯槽骨頂レベル(以下骨レベル)に変化が生じ、骨レベルは補綴処置後1年で、インプラント-アバットメント接合部(以下IAJ)から根尖側へ1.5~2.0mm(歯槽骨頂から2~3mm)の所へ変化するといわれており2)、特にプラットフォームとアバットメントが同径の場合はほとんどのケースで起こる生理的な反応とみられる(図5‐1‐1)。また変化量自体は埋入時の歯槽骨頂とIAJとの位置関係に影響を受けるといわれている3、4)。 1991年に3i社は直径4.1mmの標準径のインプラントに加え、5mmと6mm径のワイドプラットフォームのインプラントを販売したが、アバットメントを標準径のものを使用した場合には骨レベルに変化が少ないことが着目され、Platform Switching Theoryと命名された(2006)1)。すなわちインプラントのプラットフォームとアバットメントの径を変え、段差をつけると骨吸収を防ぐ作用があることがわかった(図5‐1‐2)。 アンキロスインプラントは1985年の開発当時からこの点に注目し、プラットフォームとアバットメントの接合部の径を変え、プラットフォームを骨レベルより深く埋入することにより、長期にわたる高い組織安定性を誇ってきた(図5‐1‐3)。骨レベルの変化の理由2 2回法インプラントにおける上部構造装着後の骨レベルの変化については、多くの報告がある。① インプラント頚部が広がっている形状の場合は咬合圧がインプラント歯冠側皮質骨部に集中し、骨吸収が生じる(図5‐1‐4)5)。② 炎症により骨レベルに変化が生じる。これはIAJの上方と下方の2ヵ所で起きる。上方は歯肉溝のプラーク由来の炎症で、下方はIAJにおけるマイクロギャップ由来の炎症が原因になっている(図5‐1‐5左図)6、7)。IAJを内方(中心部)に移動させることにより、IAJに由来する炎症を抑えられ、骨吸収を70%減少させることができた(図5‐1‐5右図)8)。③ 埋入時のプラットフォームの位置を骨内にしても、骨は標準埋入と同様のレベルまで吸収する9、10)。加藤仁夫(Takao Kato)日本大学松戸歯学部口腔顎顔面インプラント学 准教授日本大学松戸歯学部付属病院口腔インプラント科 科長日本大学松戸歯学部卒業日本口腔インプラント学会指導医・専門医長期安定性を維持するためのプラットフォームシフティングの考察
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