長期安定インプラント治療
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5.1 長期安定性を維持するためのプラットフォームシフティングの考察77④ インプラントの生物学的幅径に関する報告は多数あり、それによるとすべての歯科用インプラントにおいてインプラント周囲組織には生物学的幅径が存在し、インプラントが歯肉を貫通する場合には一定の幅の上皮が必要であり、上皮が薄い場合には骨が吸収して一定の厚さを確保する(図5‐1‐6)。2回法インプラントにおいては、生物学的幅径は2ヵ所で生じる可能性がある。1ヵ所は上記の上皮を貫通する部位であり、も図5‐1‐1 インプラントのプラットフォームとアバットメントの径が同じ2回法インプラントでは、埋入深さは歯槽骨頂とカバースクリュー頂部の位置が一致するように設定されている(矢印)。軟組織で閉鎖されているときは骨レベルに変化はみられない(左図)。上部構造装着後1年で骨レベルは変化し、根尖側に2~3mm程度吸収する(右図)。文献1より引用改変。図5‐1‐2 プラットフォームとアバットメントの径が同じ場合は骨吸収を起こす(骨レベルが下がる)(左図)が、径を小さくすることにより骨吸収を防ぐことができる(右図)。図5‐1‐3 アンキロスインプラント埋入状態の模式図。アンキロスインプラントの場合はプラットフォームとアバットメントの接合部の径を変え、プラットフォームを骨レベルより深く埋入することによりプラットフォーム上に骨が新生し、辺縁封鎖性が良くなるため、長期にわたり高い組織安定性が得られる。IAJ炎症性細胞浸潤炎症性細胞浸潤健全な結合組織健全な結合組織図5‐1‐4 応力集中説:ネック部(頚部)が拡がっている場合(→)、咬合圧が歯冠側皮質骨に応力が集中し、骨吸収が起こる。文献11より引用改変。図5‐1‐5 炎症説:IAJの軟組織内に炎症が生じた結果として骨吸収が起こる(左図)。インプラント周囲に2ヵ所の炎症領域を認めた(歯肉溝のプラーク由来、アバットメント由来)。右図のようにIAJを内方(中心)に移動させ、IAJに由来する炎症を抑えることにより、70%骨吸収を防ぐことができた。図5‐1‐6 生物学的幅径説:すべての歯科用インプラント周囲には生物学的幅径が存在する。インプラントが上皮を貫通する場合には一定の幅が必要で、粘膜が薄い場合には骨を吸収し、上皮を獲得する。①歯肉貫通直後、②歯肉貫通1年後。文献12より引用改変。IAJIAJ確立された生物学的幅径埋入時点での組織状態①②
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