93症例で知るインプラント日常臨床
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はじめに抜歯後即時インプラント埋入(新鮮抜歯窩にインプラントを埋入する)は、とくに新しい技術ではない。1989年に、この種の論文が初めて発表されている1)。保存不可能な歯を抜歯して、同時にインプラントを埋入することによって、歯槽窩はほぼ完全に消滅する。元来、このような術式は段階法で行われているが、しばしば、同時法で行われることもある。論文で報告される結果については、時として矛盾していることがある。ある筆者らは、素晴らしい結果を得られたと報告しているが、ある筆者らは、骨吸収の増加、軟組織の唇側部の裂開、最後には、好ましい長期的結果が得られないなど、いくつかの問題点があると報告している。これらの論文で報告されている術式において、もっとも頻繁に利用されているインプラントシステムは、バットジョイントコネクションをもっている。すなわち、インプラント‐アバットメント結合部は、たえず一貫して、マイクロギャップと関連があると知られている。そのマイクロギャップは、インプラント周囲炎、骨吸収、歯肉退縮の増加の原因となる。抜歯した歯をインプラントに置き換える治療計画には、以下の具備条件が必要である。すなわち、もともとの歯根の寸法に近い直径の、チタン表面積の大きい、歯冠部におけるエマージェンスプロファイルを向上させたインプラントを選択することである(不可避と考えられてきた時期もある)。インプラント周囲の歯肉退縮を最低限度に抑えるには、インプラントヘッドが歯槽骨頂よりも下に埋入されることである。即時インプラント埋入と歯冠修復最近、新しい技術が開発されている。抜歯後即時インプラント埋入と同時に、テンポラリークラウンをアバットメントに装着する。これは、即時歯冠修復として知られている。この術式における論文は、すでに発表されている2)。歯根破折や治療不可能な根尖病巣によって抜歯された上顎前歯部における即時インプラント埋入と即時歯冠修復についてのガイドラインを以下に記す。手術における具備条件(必須事項)1)完全に歯槽骨壁に囲まれている(4壁性骨欠損である)言うまでもなく、歯槽骨に1壁でも骨欠損がある場合、失われている骨をまず始めに骨造成にて再生させることに治療計画を修正する。このような症例では、即時荷重は残念な結果にしか終わらないので推奨しない。結果として、保存不可能な歯牙を抜歯する時には、抜歯過程においては、できる限り非外傷的に行わなければならない。2)インプラント傾斜埋入(頬舌側的):頬側壁に絶対に触れない時として、歯槽骨の解剖学的形態はさまざまであり、混乱を来たし、誤解を招くので、相当な手術への熟練、経験が必要となる。コンビーム型歯科用CTは問題解決のためには非常に有効である。コンビーム型歯科用CTは、最小限の放射線被曝に抑えられるので、単独インプラント部位に使用される(図1)。3)歯槽骨頂中央2mm下にインプラント埋入するなぜ中央なのか?歯槽骨頂下2mmにインプラントを埋入する目的は何か?径の小さいインプラントを使用するのはなぜか?これらの質問に対する答えは筆者が紹介する概念、すなわち、インプラント周囲の生物学特集審美領域における抜歯後即時インプラント埋入―予知性のある結果を得るためには―MarcoDegidi(MedicalSchool‐UniversityofBologna,Italy)訳/糸瀬辰昌(歯科糸瀬正通医院)8特集審美領域における抜歯後即時インプラント埋入―予知性のある結果を得るためには―

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