93症例で知るインプラント日常臨床
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的空隙に対する概念の中程に記述されている。この概念に基づいた本術式は、非常に高い予知性をもたらしてくれる。歯槽骨頂下にインプラントを埋入することによって、三次元的空間はまるで部屋のように構成される。すなわち、部屋の床がインプラントヘッドで、部屋の側壁が抜歯窩の4壁である(図2)。当面、部屋の蓋は失われたままである。部屋の蓋は、テンポラリークラウンの歯根部の下部(歯肉に接する部分)で構成される。もちろん、インプラントヘッドが歯槽骨頂同一平面もしくは歯槽骨頂に位置しているなら、三次元的空間は存在しない。この部屋には外科的外傷によって放出された治癒因子、骨誘導因子に富む血液が満たされる。したがって、生物学的空間を最小限度の侵襲で終わらせることがいかに重要であるかがわかる。4)上記3つを満たしたもっとも小さな径のインプラントを選択する小さな径それ自体が必須ではない。しかし、大きい直径のインプラントを使用すると、インプラントと頬側骨壁との距離を保つのが難しくなる。さらに、われわれが根尖側にインプラント埋入していく際に、インプラントを埋入するのに可能な骨量が減少し、骨は舌側に移行していくので、外科医が舌側方向にインプラントの埋入軸を変更せざるを得ない。結果として、大きな径のインプラントを使用することによって、頬側骨壁を使用せざるを得なくなり、われわれが避けたいと願ったことが起こってしまう。5)できる限りフラップを起こさない(可能であればフラップレス)外科医にとってフラップを起こしたほうが術野を確保できるし、結果として考えられる失敗を少なくできる(図3)。しかし、フラップを開けると骨吸収が増加してしまうので、できる限り、フラップを起こさないほうが良いであろう。コンビーム型歯科用CTは術野において見えない部分も十分に補ってくれるし、自動的に役立つ情報を与えてくれる。6)吸収しにくい骨補填材料で頬側のギャップを埋めるこれまでのステップが正しく実行されていれば頬側骨壁が吸収することはないし、するにしても最小限の垂直的骨吸収にとどまっているであろう。正しく実行されなければ、頬側骨壁が全体的に舌側方向に移動し、インプラント表面自体が露出してくる。厚いバイオタイプの症例なら問題がない。しかし、薄いバイオタイプの症例の場合、長年経過していくに従い、頬側歯肉の暗色が認められるようになる。インプラント手術を行う際に、頬側ギャップ部に吸収しにくい骨補填材料で骨造成をしておくことで、これらの問題を簡単に防ぐことができる(図4)。7)初期固定が得られる(25Ncm以上)即時荷重を加えるためには、必須具備条件である(図5)。良い初期固定が得られなければ、即時歯冠修復を施すことが壊滅的であるということは明白である。図1適正な位置・方向にインプラントが埋入された。図2抜歯窩に埋入されたインプラント周囲の唇側には十分なスペースが確保されている。図3ノンフラップ手術により唇側の誤った方向に埋入されたインプラント。図4インプラント周囲のスペースに吸収しにくい骨補填材料を填入しておく。図5埋入トルクが大きく、初期安定性が高いことがトルクメーターから判断できる。70Ncm0102030sec10max49.7Ncm図1図2図3図4図59特集審美領域における抜歯後即時インプラント埋入―予知性のある結果を得るためには―

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