93症例で知るインプラント日常臨床
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症例の概要患者は59歳の女性。主訴は咀嚼障害と前突による審美障害。全身的既往は特になく非喫煙者。上顎は重度歯周病により保存困難な状況であるが、嘔吐反射が強く義歯に非常に抵抗感があり、やむなく経過をみていた。しかし、動揺が強くなったためフラップレス抜歯後即時荷重をリスクも含め説明したところ、強い希望が得られたので十分に検討したうえで施行した。義歯にせずに機能・審美改善ができ、患者の高い満足を得ることができた。処置内容とその根拠インプラントは急速に普及し、その流れは外科主導から補綴主導に、そして現在、患者主導という考え方が浸透しつつある。その意味で義歯の使用経験がなく多数抜歯が必要な多数歯残存症例において、最小の侵襲でできるフラップレス抜歯後即時荷重は、患者の高い満足が得られる検討に値する優れた治療法と考えられる。そこで慎重な症例選択のうえで、この方法を行っているが、良好な成績を得ているので、当症例においても施行した。図1動揺が強く保存困難な状況であるが義歯に強い抵抗感があり、やむなく経過をみていた。図5診断用模型を抜歯後を想定した模型に改造し、ソフトにてCTデータに重ね合わせる。図9テンポラリーシリンダー装着後、即時重合レジンでプロビジョナルにてピックアップ。52コンピュータガイディングシステムによるフラップレス抜歯後即時荷重の検討田中譲治(千葉県開業)図2フラップレス抜歯後即時荷重を計画。デンタルX線からすべて保存困難と考えられた。図6インプラント埋入位置のバーチャルプランニングを行い、外科用テンプレートを製作。図10手術当日。完成したプロビジョナルにより微少動揺が抑えられ即時荷重が可能となる。図3診断用と外科用テンプレートを同一に位置づけするため矯正用インプラントを埋入。図7外科用テンプレートで埋入を想定した模型製作、事前に強固なプロビジョナルを製作。図11経過良好で、義歯にせずに機能および審美改善ができ、患者の高い要望に応えられた。図4矯正用インプラント(現在はIPを使用)と口蓋を利用したテンプレートにてCT撮影。図8抜歯後、診断用と同一に位置づけした外科用テンプレートによりインプラント埋入。図12この方法はまだ多くの課題があるが患者主導の観点からは非常に有効と考えられた。664章インプラント補綴外科審美矯正補綴テクノロジーリカバリーメインテナンス
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