エナメル質・象牙質・補綴物のプロフェッショナルケア
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24脱灰病変は春先の雪のごとくナイーブである 臨床的に肉眼で観察できる白濁のような初期脱灰病変は、拡大するとどのようになっているのであろうか? 白濁として観察される初期う蝕の観察は、肉眼や2.5倍程度のルーペでは限度があるため、実体顕微鏡を用いて観察してみた(図7-1~3)。 観察に用いた歯は、抜歯後間もない上顎8番(図7-1)で、白濁部は遠心の歯肉から萌出し口腔内にさらされていた部分であり、清掃不良のため脱灰が進行していったと考えられる。白濁部と健全部との境界は歯肉縁の位置と一致している。 図7-2は、実体顕微鏡で100倍にして観察した像である。エナメル質表層の形態はまだ崩れていないが、脱灰が深く進行しているようすがわかる。しかし、わずかに汚染物質の付着や着色も見られるため、有機質溶解剤で取り除くことにした。 図7-3は、さらに実体顕微鏡で175倍まで拡大したものである。10%次亜塩素酸ナトリウムで表面の有機質を溶解すると、微細な表面性状が観察できる。エナメル質表層に凹凸が認められ、内部からミネラルが抜け出て結図7-1~3 実体顕微鏡で観察する脱灰病変12図7-1 抜歯後間もない上顎8番を観察対象とした。白濁部は遠心の歯肉から萌出していた。白濁部と健全部との境界は歯肉縁と一致している。3×100×100×175 有機質溶解処理後×175 有機質溶解処理後図7-2 実体顕微鏡で100倍で観察した像。エナメル質表層の形態はまだ崩れていないが、脱灰が深く進行しているようすがわかる。図7-3 有機質溶解剤による処理後、実体顕微鏡で175倍で観察した像。微細な表面性状が観察できる。エナメル質表層に凹凸が認められ、内部からミネラルが抜け出て結晶が疎になっている。春先の溶けかかったザクザクした雪の固まりのようである。外形はかろうじて保たれているが、強度の低下は容易に想像がつく。

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