有病者の対応チェアサイドSOSブック
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FILE 1脳血管障害13口腔への影響は? 口腔領域の運動障害や唾液分泌量の減少のために、自浄作用が低下します。また、腕や手指の運動障害によってブラッシングが行いにくくなるため、口腔内が不潔になりがちです。この他、摂食嚥下機能障害による誤嚥を起こしやすく、誤嚥性肺炎の危険性が高まります。どんな口腔を呈する? 舌や頬部の運動障害により、食物残渣の停滞が起こりやすく、舌苔が増えることも少なくありません(図3)。特に、麻痺側の舌苔が厚くなることが多いです。プロファイルDATA4来院時に収集する情報は? 脳血管発作を起こした時期、後遺症、服薬について情報収集をします。高血圧症などの合併症については、それぞれ対処が必要なので、状況を把握しておくことが大切です。処置の際に気をつける点は? 一般的に、発作後6ヵ月以上経過してから歯科治療を行います。治療中は血圧の変動に気をつけ、ストレスをかけないようにし、チェアタイムを短くします。 また、スムースなコミュニケーションが取れない場合が少なくありません。説明はわかりやすいことばで端的に伝えてあげてください。ユニットへの移動が困難であったり、姿勢によっては誤嚥を招きやすい、同一の姿勢を長く続けられないといった問題もあります。安全に配慮し、操作はゆっくり行います。 なお、歯科で使う薬がワルファリンに影響する可能性があるので、これも注意が必要です。来院時の発作等への対応は? 手足のしびれ、意識障害、嘔吐がみられた時は、脳卒中が疑われます。また、くも膜下出血では激しい頭痛をともないます。こうした場合、患者をゆすらないよう安静を保ち、救急車を要請します。意識がない場合は気道を確保し、BLS(一次救命処置)を行います【82ページ参照】。図3 脳血管障害により舌の動きが低下し、唾液分泌量も少ない患者の口腔内。舌苔が多く付着している。プロファイルDATA3脳血管障害患者の口腔脳血管障害患者と歯科衛生士
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