薬 '10-'11
2/4
1炎症35全身疾患などへの対応 通常の歯性感染症の治療薬の使用時と同様の対応が必要とされる.投薬の背景 インプラント周囲炎は,オッセオインテグレーションが獲得された機能下のインプラントに細菌感染や負担過重などで生じたインプラント周囲の骨破壊を伴う炎症性病変をいう.インプラント周囲の炎症性病変には,このインプラント周囲炎のほか,インプラント周囲軟組織の可逆的炎症過程のインプラント周囲粘膜炎,インプラント先端部にエックス線透過性病変をみるインプラント先端周囲病変が知られる.したがって,治療に際して,プラークの存在,ポケットの深さ(PPD:probing pocket depth),BOPの有無,排膿の有無,エックス線所見による骨吸収量の評価による病変の診断ならびに進行状況の判定が必要とされる. インプラント周囲炎の治療は,罹患部の炎症症状の消退を図ることを目的とする.現在,推奨されているプロトコールは累積的防御療法(cumulative interceptive supportive therapy:CIST, コンセンサス会議,Gstaad,2003)である.まず,歯周基本治療に準じ,プラークコントロールの再指導・徹底,インプラント周囲の機械的清掃・研磨を行う.荷重負担に対する咬合調整,ブラキシズム,喫煙,全身疾患への対応も考慮する. これらの処置で改善がなく,BOPがあり,PPDが4~5mm,エックス線所見で骨吸収がない場合には,殺菌薬療法(Antiseptic cleansing)を追加する.すなわち,ポビドンヨードまたは塩化ベンゼトニウム薬液によるインプラント周囲ポケット内の洗浄を行う.CISTでは,本邦で使用禁止のクロルヘキシジン(0.1~0.2%)が使用されている. この殺菌薬療法によって症状の改善が期待できず,BOPがあり,PPDが5mm以上,エックス線所見で骨吸収(2mm以下)がある場合には,抗菌薬療法(局所投与・全身投与)を追加する.インプラント周囲と歯周病の細菌叢は類似するため,歯周病治療に準じる抗菌薬を選択する. 抗菌薬の局所投与は,徐放性をもつミノサイクリン歯科用軟膏(ペリオクリンⓇ)をインプラント周囲ポケット内へ注入する.全身投与には,広範囲ペニシリン系,セフェム系,テトラサイクリン系,マクロライド系の抗菌薬などを内服する.CISTでは,本邦では歯科適用のない抗トリコモナス薬メトロニダゾールが使用されている.投薬のポイント インプラント周囲炎の治療は,プラークの存在,ポケットの深さ,BOPの有無,排膿の有無,エックス線所見による骨吸収量の評価による病態の進行状況を把握後,プラークコントロールの徹底,インプラント周囲の機械的清掃という歯周基本治療を行う.次いで,進行に応じて殺菌薬療法(ポビドンヨードまたは塩化ベンゼトニウム薬液によるポケット内洗浄)を行い,必要なら抗菌薬の局所投与(塩酸ミノサイクリンペーストをインプラント周囲ポケット内へ注入),内服薬としてペニシリン系,セフェム系,テトラサイクリン系,マクロライド系の抗菌薬などを投与する.
元のページ