口腔外科症例集
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CASE 28舌にみられる疾患66CASE 28★左舌尖部にびらんが認められる.一部周囲に軽度の硬結がある.接触痛(+).口内炎ではなく腫瘍の可能性が高いので生検を行った.確定診断⇒神経鞘腫.局所麻酔下で摘出(周囲の硬結部位:安全域を2mm程度).<初診時の所見>★舌背中央部に楕円形の茶褐色の病変が認められる.硬結(-),自発痛(-).ガーゼで拭いても取れない.色調により,臨床診断⇒黒毛舌.悪性病変ではないので,生検は行わず経過観察とした.▼神経鞘腫とは 非上皮性の良性腫瘍.末梢神経の軸索突起を包むシュワン細胞から生じる.舌,頬に発生するがまれである.無痛性に緩慢に増殖し,境界は明瞭で弾性硬.これに対し,神経線維腫はシュワン細胞と結合組織細胞に由来する良性腫瘍で,多発性に生じたものは神経線維腫症(von Reckling-hausen病)と呼ばれ,顔面の変形などを伴う.▼黒毛舌とは 舌背中央部の糸状乳頭が角化・肥厚し,ここに煙草や細菌の産生する色素などが付着して,黒色を呈する状態.副腎皮質ホルモンの投与,あるいは抗菌薬の連用後に菌交代現象として生じることが多い.薬剤が原因であれば,投与中止により数週間で自然治癒する.原因不明の場合は,舌苔の除去などを行う.症例47歳男性.主訴:舌尖部の疼痛.現病歴:10年ほど前から舌尖部の疼痛を自覚していたが,舌尖部にびらんが認められ,近歯科医院を受診.精査をすすめられ当科を紹介来院.口腔内所見口腔内所見症例76歳男性.主訴:舌の黒色病変.現病歴:舌背中央部が楕円形に黒くなっているのに気づき,心配になり来院.患者は10日前に梅干を食べたらできたと申告しているが原因は不明.とくに薬の服用はないとのこと.その後1か月後に消失したとの連絡があった.
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