スーパーベーシック ペリオドントロジー
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112歯肉剥離掻爬術(歯肉剥離掻爬術(フラップ手術/FOPフラップ手術/FOP))4 すべての歯周外科手術の基本は「歯肉剥離掻爬術」にあると言っても過言ではありません。その術式も歯肉弁のデザイン、縦切開や骨外科の有無、歯肉弁の整復位置等、長年にわたり改良され、学術的には数種類のフラップ手術に分類されます。 しかしながら私たち日本人(黄色人種)は角化歯肉に乏しく、その幅と厚みが十分に存在しません。そのため歯周ポケット除去のための歯肉切除術は不向きですし、教科書に記載されているように辺縁歯肉を1~2mm切ったりすると、術後に角化歯肉が欠如します。 そこで可及的に角化歯肉を温存するため全層弁を剥離・翻転し根尖側に移動する「根尖側移動全層弁歯肉剥離掻爬術」が最良の術式となります。これは歯根表面、および歯槽骨を直視・直達でき、歯周ポケットを除去し、骨外科手術も行える効果的な術式です。手術の難易度も中程度で、ある程度の研修を積めば誰にでもできる予知性の高い術式です。4-1難易度は中程度! 歯肉剥離掻爬術は予知性の高い術式4-2歯肉剥離掻爬術の適応と禁忌 →深い歯周ポケットを含む大半の症例に対応 以下の場合が適応となります。① 骨縁上ポケット、あるいは骨縁下ポケットが存在する場合② 歯周ポケットが歯肉歯槽粘膜境を越えて存在する場合③ 角化歯肉が存在する場合④ 切除療法、もしくは再生療法をふまえた骨外科手術が必要となる場合⑤ 臨床的歯冠を延長し修復処置、あるいは補綴処置を容易にする場合⑥ 歯肉の形態が左右非対称であったり、ガミースマイルのような審美的問題がある 深い歯周ポケットを含むほとんどの症例に対して適応となります。歯周ポケットの除去が主たる目的ですが、補綴治療のための前処置、あるいは審美性の回復も目的となります。歯肉切除術の適応症にも重複しますので、結果的に歯肉剥離掻爬術が第一選択となります。 以下の場合が禁忌となります。①外科的治療が不可能な重篤な全身疾患がある場合②歯周治療に対して協力が得られないような患者③口腔粘膜疾患が認められる場合 通常の生活ができる方であればほとんどの患者さんに適応できますが、外科的治療が不可能な重篤な全身疾患がある場合は禁忌となります。身体に問題がなくても歯周治療に対して協力が得られない場合は相対的に禁忌とみなした方がよいです。初期治療の期間にしっかりと見分けることが大切です。また口腔粘膜疾患が認められる場合も禁忌とみなします。
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