最新のKBテクニック
3/8

73Ⅲ 診断と基本的治療術式2)アーチレングスディスクレパンシーの大きさによる抜歯部位の選定法 矯正治療上もっともよく利用される小臼歯(第一,第二)に焦点を当てて記載する.アーチレングスディスクレパンシーの大きさと小臼歯抜歯部位の選定を結びつける場合に,過去に小臼歯抜歯で矯正治療が良好に行われた上顎前突症例の上下顎切歯の移動量(mm)(図Ⅲ‐6),および一般的に歯科矯正学の教科書に広く記載されている固定の程度による小臼歯抜歯空隙の閉鎖状態(表Ⅲ‐1)を参考資料とした.ⅰ)第一小臼歯抜歯の診断基準(アーチレングスディスクレパンシー)について 上下顎第一小臼歯が抜歯される症例は最大限に固定を保つ必要のある症例か,または中程度に固定を保つ症例の一部までである.したがって,前歯の後退量は片側の小臼歯抜歯空隙で4.5~3mm程度であり,臼歯部の前進量は1.5~3.0mm程度である(表Ⅲ‐1).そのため,アーチレングスディスクレパンシーが-9mm以下は第一小臼歯抜歯であり,-9~-6mmの範囲では,症例によっては第一小臼歯が抜歯される(図Ⅲ‐6).ⅱ)第二小臼歯抜歯の診断基準(アーチレングスディスクレパンシー)について 上下顎第二小臼歯4本の抜歯は中程度~最小限度の固定を必要とする場合に,最近非常に頻繁に行われる.すでに上下顎第二小臼歯4本抜歯により良好な安定した治療結果に仕上げられた上顎前突100症例における上下顎切歯の合計後退量は平均で7.0mmを呈しており(図Ⅲ‐6),これに上下顎第二小臼歯の近遠心幅径(上顎:7.07mm,下顎:6.71mm)を参考とし,さらに必要な固定の程度(中~最小限度)による抜歯空隙の閉鎖量(中程度の固定の場合,前歯群の後退量3~4.5mm,臼歯群の前進量1.5mm,最小限度の固定の場合,前歯群の後退量3mm以下,臼歯群の前進量3mm以上)を用いて第二小臼歯抜歯の場合のアーチレングスディスクレパンシーを決定すると-6mmが基準となり,-9~-6mmの範囲か-6~-3mmの範囲となる.一般的には,-9~図Ⅲ‐6 上下顎第一小臼歯抜歯(101症例),上顎第一小臼歯・下顎第二小臼歯抜歯(100症例),上下顎第二小臼歯抜歯(100症例)における上下顎切歯の合計後退量(mm)を示す(Raleigh Williamsによる).空隙の利用状態固定の程度前歯の後退量(mm)臼歯の前進量(mm)Maximum anchorageModerate anchorageMinimum anchorage4.5mm3.0~4.5mm3.0mm以下1.5mm1.5~3.0mm3.0mm以上固定の程度による小臼歯抜歯空隙の閉塞.表Ⅲ‐1a mm:上顎切歯後退量b mm: 下顎切歯後退量(ただし下顎切歯を前傾させた場合は(-)をつける)抜歯:(a+b)=10.3mm抜歯:(a+b)=9.3mm抜歯:(a+b)=7.0mm

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です