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68杭血栓薬2CHAPTER22ワルファリンやアスピリンなどの抗血小板薬を継続したまま抜歯した場合,どのような合併症が起こる可能性がありますか?nswer術中,術後出血や術後内出血を起こす可能性があります.しかし,抗血栓療法が安定している場合には,術中異常出血をきたす可能性は低く,また局所止血処置を適切に行うことにより術後出血のリスクが避けられます. ワルファリンやアスピリンなどの抗血小板薬を抜歯時に継続した場合には,抜歯時や抜歯後出血を起こす可能性があります.1957年Ziff erらが,抗凝固療法継続のまま抜歯を行った結果,後出血をきたした2症例を報告しました.1例目は抗凝固療法を継続したまま上顎大臼歯を抜歯し,後出血を起こし顔面腫脹と広範囲の血腫を認めた症例です.抗凝固療法を中断しビタミンKの投与を行いました.2例目は下顎大臼歯の抜歯後,5日間出血が持続した症例です.本症例は,抗凝固療法の中断とビタミンKの投与と輸血を行っています. このために,日本では抜歯時には抗凝固薬のワルファリンを中断する慣習がありました.まだ多くの施設や医師,歯科医師が抜歯時にワルファリンやアスピリンを中断しているのが現状だと思います.しかし,最近では,抜歯時,血栓薬中断による血栓・塞栓症イベント合併の危険性が問題視されています.適切な局所止血処置を行うことにより,ワルファリンや抗血小板薬を継続したまま抜歯可能という研究論文が増えています. Wahlは,ワルファリンを継続したまま抜歯した場合,950人中,12人(約1.3%)に,局所止血処置でも対応できなかった出血があったと報告しています.12人中,7人は抗凝固療法が効きすぎていたためで,3名は抗菌薬の影響,2名は24時間含嗽を避けるように指示したが,すぐに含嗽をしてしまったために出血したと考察しています.それらの症例には,ビタミンKや新鮮凍結血漿の投与を行っています.抜歯時にワルファリンを中断した場合に死亡例はありますが,継続したまま抜歯を行ってもほとんどの症例では局所止血処置で止血し,出血死の報告はないのでワルファリンは継続するべきであると述べています.抗血栓薬服用患者の口腔粘膜図2‐1 抗血小板薬服用患者の頬粘膜の点状出血斑.図2‐2 ワルファリン服用患者の頬粘膜の血腫.

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