別冊YB2011 日常臨床で必ず使えるコンポジットレジン修復の一手
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14Part1 コンポジットレジン修復の最新の潮流&押さえておきたいエビデンスはじめに──コンポジットレジン修復の歴史 コンポジットレジン修復ほど,今なお進歩を続けている歯科の治療法は他にあるだろうか? コンポジットレジン関連の新規材料開発は毎年のように進み,それにともない治療方法も少しずつ変化している(図1). 19世紀後半からの近代歯科学におけるう蝕治療では,修復材料あるいは修復方法に注目がおかれ,う蝕になった歯質そのものの治療方法(どの部分がう蝕なのか,どのようにして取り除くのかなど)に関して議論されることはほとんどなかった.20世紀中期になると,歯科局所麻酔による切削痛の緩和,エアタービンによるhigh speed dentistry,そして精密鋳造理論の体系づけ,などが始まることで,修復物の適合精度を競う金属間接修復を中心としたう蝕治療の流れがさらに一般臨床に広まり,ますます歯質そのものの状態は注目されなくなってしまった. 1960年代に歯冠色修復材料という位置づけで,修復材料の1つとして臨床家に紹介されたコンポジットレジンは,他の修復材料と同様にう蝕の状態や進行速度に関係なく,エアタービンにより形成され,きれいな健康象牙質が露出した窩洞に充填されていた.これまでの修復材料との違いは,エナメル質にリン酸エッチングを行い「材料と歯質(エナメル質)を接着させる」という発想であった. このようななか,う蝕に罹患した歯質(象牙質)を臨床的に診断して治療するという,まったく違った側面からのう蝕治療のアプローチが日本で始まった.1960年代から東京医科歯科大学・総山孝雄教授の下で約15年間にわたり行われたう蝕象牙質に関する研究は,う蝕象牙質の臨床的診断とその治療方法(う蝕象牙質の除去方法)を臨床家に示した.それは,う蝕治療はう蝕原性菌に罹患した感染象牙質をう蝕検知液により選択的に削除するだけで十分であり,健康な象牙質への侵襲は不要である,というものでsection 1コンポジットレジン修復の最新の潮流秋本尚武鶴見大学歯学部歯科保存学第一講座連絡先:〒230‐8501 神奈川県横浜市鶴見区2‐1‐3Naotake AkimotoNewest Trends in Resin Composite Restoration◆著者紹介1961年 神奈川県横浜市生まれ1986年 鶴見大学歯学部卒業 同第一歯科保存学教室助手1995年 博士(歯学)取得1996年 米国・アラバマ大学バーミングハム校歯学部バイオマテリアル講座留学(~1997年)2004年 鶴見大学歯学部第一歯科保存学教室講師2010年 同歯科保存学第一講座(名称変更)講師,現在に至る◆主な著書『接着治療失敗回避のためのポイント45:なぜ付かないのか なぜ治らないのか』(小社刊)
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