少ない色でスピーディに仕上げるためのコンポジットレジン充填テクニック
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17色あわせに「白背景」「黒背景」のコンセプトを活用しよう透明度重視の充填に必要な「白背景」「黒背景」窩洞の定義 このようにコンポジットレジン充填においては、その色の再現において透明度のコントロールが重要である。図1-16でも示したように透明度が高くなると背景の色に左右されるため、充填する歯のデンティンの有無により、使用するコンポジットレジン材料の選択は大きく変わることになる。 ここではデンティンが存在し、光を遮断し、背影に左右されないタイプの窩洞を「白背景窩洞」、デンティンが失われて光が透過し、背景に左右されるタイプの窩洞を「黒背景窩洞」と便宜的に定義しておく。患者が見る方向・範囲で「白背景」「黒背景」窩洞をとらえよう 通常、歯科では前歯部の唇側面から見た方向を「審美ゾーン」と定義しているが、本書では「患者が見る方向とその範囲」を審美ゾーンと定義したい。なぜなら、コンポジットレジン充填後、通常患者は自分の歯を臼歯部は咬合面から、前歯部は唇側から観察し、色があっているか確認するからである。 ならば患者から見える部分を「審美ゾーン」と定義すべきであろう。色あわせは術者にとってその色がどうかよりも、患者にどう見えるかという観点からとらえなおすべきと筆者らは考えた。それによって過剰な色あわせなどの不効率な作業を少なくし、チェアタイムの延長を避けることができるだろう。 筆者らは充填にあたって患者が見える方向からⅠ級からⅤ級までの窩洞を観察し、上述した窩洞分類を部位ごとに行った(図1-16窩洞ごとの背景の分類)。 Ⅰ級は咬合面窩洞でデンティンが多く存在し、光がほとんど透過しないため「白背景窩洞」となる。Ⅱ級は咬合面と隣接面窩洞を有し、隣接面窩洞においてはデンティンが失われているため、隣接面は「黒背景窩洞」、咬合面はⅠ級窩洞と同様に「白背景窩洞」の混合条件である。Ⅲ級、Ⅳ級においては隣接面から切端にかけての窩洞は、いずれもデンティンが失われ光が透過するため「黒背景窩洞」である。Ⅴ級窩洞は、歯頸部のデンティンが存在し、光がほとんど透過しないため、「白背景窩洞」に分類される。たとえば44のⅤ級窩洞は、頬側から見ると「白背景窩洞」であるが、近心隣接面の方向からは、Ⅲ級窩洞の「黒背景窩洞」に見える。このように術者は患者が見る方向を考慮して充填することが望ましい。
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