別冊 天然歯vsインプラント
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92はじめに 近年、審美領域におけるインプラント治療の応用が増えるにつれ、歯肉退縮によるアバットメントやインプラント体の露出などのトラブルを引き起こすケースが多くなっている。治療直後には審美的な結果が得られていても、数ヵ月後あるいは数年後に歯肉退縮が生じるというケースも多く見られる。 天然歯においては、歯肉退縮を生じた露出根面に対して上皮下結合組織移植による根面被覆術やその他さまざまな術式が報告されており、予知性の高い治療として日常臨床に応用され、その治療結果も長期的に安定している。しかし、インプラント治療において、いったん露出したアバットメントやインプラント表面に対して、天然歯と同じような被覆術が可能であるかどうかは疑問である。もし、可能であったとしても、軟組織とインプラント表面との付着様式は解明されておらず、露出インプラント表面に対する軟組織による被覆術は、現時点では予知性の高い治療法とは言い難い。 したがって、インプラント治療においては治療計画立案の時点で、治療後の歯肉退縮を防ぐような対処を行うことが重要であると考える。すなわち、抜歯後の歯槽骨の吸収、インプラント唇側歯槽骨の厚み、軟組織のバイオタイプなど、治療結果の長期的安定性に影響を与えると思われる因子に関して明確な基準をもち、その治療のゴールに対して治療計画を立てることが重要であると思われる。天然歯の歯肉退縮に対する治療 天然歯における歯肉退縮の原因は、表1に示すように付着歯肉の不足や歯槽骨の状態が大きく影響してい天然歯とインプラントの歯肉退縮に対する考察A Consideration for Gingival Recession on Natural Teeth and Implants宮本泰和(四条烏丸ペリオ・インプラントセンター)Yasukazu Miyamoto(Shijo Karasuma Perio Implant Center)
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