別冊 天然歯vsインプラント
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110はじめに インプラント治療技術の進歩、情報の普及により患者側の審美的要求も高まり、骨量が不十分な部位への埋入も臨床で広く実践されはじめている。しかし、前歯部審美領域のインプラント治療は、非常に高い水準での審美性が求められるため、より慎重なアプローチが重要であると思う。 本稿では、審美領域におけるインプラント治療の考慮点について、リスクファクター、予知性、永続性、ソケットマネージメントに重点を置き、さまざまな臨床的工夫をいくつかの症例とともに提示し、その論理と解決法を説明したい。リスクファクター インプラント治療のみならず、歯科治療を成功に導くためには、診査・診断が非常に重要である。審美領域のインプラント治療においては、さらに綿密な診査・診断と治療計画、そしてそれを実行できる技術が必要不可欠である。 とくに、前歯部において抜歯と判断される歯のほとんどは、陳旧性歯根破折や、歯周疾患、根尖病変などにより大部分の症例で唇側の骨欠損が生じている。このようなケースでは骨増生は必要不可欠であると思われるが、骨量と同等に、軟組織のバイオタイプも重要であると思われる。 表1はKois JCの「単独歯インプラント周囲において予知性の高い審美性を得るための5つの診断基準」1)という報告を簡潔に表にまとめたものである。これは審美上顎インプラント治療の審美性における臨床的考慮点Clinical Considerations for Anterior Implant Esthetics土屋賢司(土屋歯科 クリニック&works)Kenji Tsuchiya(Tsuchiya Dental Clinic&works)
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