有病高齢者歯科治療のガイドライン 下
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第17章ウイルス性肝炎患者の歯科治療Ⅱ-1 ウイルス性肝炎患者の問診の取り方1)ウイルス性肝炎患者を発見する 初診時に患者が記入する問診票を見ればB型肝炎やC型肝炎の既往の有無がわかるし,薬剤手帳を見れば,インターフェロンや核酸アナログ製剤の処方の有無がわかる. 輸血や血液製剤の既往に関しては,平成4年(1992年)以前に輸血を受けた患者,昭和63年(1988年)以前に血友病により血液凝固因子(Ⅷ, Ⅸ)製剤の投与を受けた患者はC型肝炎に感染している可能性がある. 血液透析患者のC型肝炎罹患率は約20%と報告されている.問診からはわかりにくいが,薬物濫用者や身体のどこかに入れ墨やボディピアスを施している患者も可能性がある(図17-16).2)ウイルス性肝炎患者の重症度を評価する B型肝炎もC型肝炎も臨床症状はほとんど現れないので,症状から重症度を判定することはできない.B型慢性肝炎の一部とC型慢性肝炎の多くは肝硬変に移行しやすいので,肝硬変を発症していれば,Child-Pughの分類を用いて重症度を判定する(第16章,P.59参照). 内科主治医からウイルスマーカに関する情報が入手できれば,感染しやすさがわかる.・B型慢性肝炎の場合は,HBs抗原陽性,HBe抗原陽性,HBc抗体高値なら,体内にウイルスが存在するので,感染しやすいと判断する.・C型慢性肝炎の場合は,HCV-RNA(+),HCVコア抗原(+),HCVコア抗体≧100単位なら体内にウイルスがいるので,感染しやすいと判断する.図17-16既往歴からHBV,HCVキャリアが疑われる患者透析液供給透析器排水HBe抗原+HBs抗原+入れ墨のある者男性同性愛者施設入所のダウン症患者麻薬その他の静注薬剤乱用者患者の母親に慢性肝疾患の既往歴あり血液透析患者輸血・血液製剤を頻回輸注している者慢性肝炎・肝硬変・肝癌の患者82
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