有病高齢者歯科治療のガイドライン 下
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第20章うつ病患者の歯科治療Ⅰ-4 臨床症状1)精神症状 精神症状として,ほとんど一日中,ほとんど毎日のように抑うつ気分になり,読書やテレビに対する興味や喜びが著しく減退し,気力も減退し,思考力や集中力が低下して無価値感や罪責感に苛まれ,死にたいと思うようになり実際に自殺を図ることもある(図20-1).2)身体症状 身体症状としては,全身倦怠感や易疲労感をほとんど毎日認め,頭痛,頭重,腰痛など身体各部位の痛みを訴え,動悸や息切れなどの症状を呈する.消化器症状では食欲不振がもっとも多くみられ,体重減少,便通異常,嘔気・嘔吐などがみられる.睡眠障害では,夜中に何度も目が覚めるといった中途覚醒,朝早く目が覚めて悲観的なことを思い悩んでしまい,眠れないといった早朝覚醒が特徴的である(図20-1).Ⅰ-5 仮面うつ病 仮面うつ病(masked depression)という言葉がある.うつ病の典型的な症状はほとんどみられないが,身体症状(食欲不振,胃部不快感など)が前面に出て,抑うつ症状が覆われてしまう(マスクされてしまう)うつ病である.うつ病の臨床症状図20-1精神症状思考力低下,集中力低下考えがまとまらない,集中できない気力減退何事にも興味,関心がなくなった好きなテレビ,新聞も見なくなった抑うつ気分不安,焦燥感,悲哀感イライラ不安自責感,罪責感,自殺念慮身体症状睡眠障害頭痛・頭重肩・首筋の凝り食欲不振全身倦怠感115
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