「圧下」のための歯科矯正用アンカースクリューテクニック
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再生療法+「圧下」は有効か?1Epilogue 再生療法と矯正治療の併用については、限られた数であるが肯定的な文献も見られる。NemcovskyやGhezziらの研究の骨補填材やメンブレンを使用し成功したという報告では、8〜14ヵ月の待時期間が設けられている14、15。一方、Araújoらの研究者では補填材を用い、イヌで3ヵ月で行った実験では失敗している16。報告によっては、Diedrichらは、その他の骨補填材なしや、エムドゲインⓇのみであれば、矯正前の3ヵ月程度の期間でも成功しているようである17、18。 筆者は、骨補填材を使用した再生療法と術後の矯正治療の併用は、現在のところできるだけ避けている。エムドゲインⓇのみの使用であれば問題はないと考えているが、補填材を使用した再生療法では、術者のスキルによるかもしれないが、筆者の場合はあまりよい感触が得られていない。再生療法の予後は術後の清掃状態に大きく左右されるためである。 矯正治療器具があることによるプラークコントロールレベルの低下や、矯正治療中に受ける咬合力による動揺など、アタッチメントゲインに不利な要因も多い。1再生療法と矯正の併用に関する筆者の評価は? 矯正治療によって根分岐部病変が改善するわけではない。むしろ、術後分岐部は悪化するのが一般的である。大臼歯がアップライトする時に挺出してくるからである。 しかし、挺出歯で分岐部の露出などがある場合には、圧下処置によって改善する可能性はある。歯周病によって起こったアタッチメントロスが適切な歯周病処置の後、圧下処置によりアタッチメントゲインが起こったと、動物19やヒト20でも報告されている。 臨床家が期待を寄せるテーマであるだけに、圧下、矯正治療、再生療法の併用が有効な手段かどうか、今後の研究が期待される。 次頁にこの三者を組み合わせて行った一例を提示する。 大臼歯の一部を矯正治療中に失うことになってしまったが、残った臼歯は圧下が行われており、歯冠-歯根比率の観点から改善があったと言えるかもしれない。矯正治療中のプラークコントロールや咬合性外傷など、難しい問題は多く、一般的な治療とは思わないが、圧下治療と再生治療の可能性が期待できることが示唆された症例であった。2根分岐部に対する再生療法+圧下+全顎矯正の可能性は?108
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