知る・診る・対応する 酸蝕症
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011酸蝕症とはなにかCHAPTER1introduction 近年,国内歯科医療では「なるべく削らない」「なるべく抜かない」治療概念が普及するとともに,う蝕と歯周病に続く第三の歯の疾患として,tトゥースooth wウェアーearが注目を集めている.残存歯(現在歯)数の増加にともない,歯科医師,歯科衛生士は,臨床の現場でさまざまなwear形態を呈する歯と対峙する必要があり,tooth wearについての知識はもちろんのこと,その臨床対応(スキル)に習熟することが求められる. tooth wearには,咬耗(歯と歯の接触によるすり減り),摩耗(歯以外の物理的な方法・手段によるすり減り),アブフラクション(過剰な咬合力により歯肉縁付近にストレスが集中し生じる歯の崩壊),酸蝕症(細菌の関与のない,酸による化学的な歯の溶解)が属している(図1)1).このうち食生活を中心とした個人の生活習慣がもっとも反映されるのが酸蝕症である. 酸蝕症は,米国でさまざまな要因によるエナメル質および象牙質の溶解が報告されて以来2),欧米諸国では広く認知されているものの,わが国における認知度は低い.しかしながら,わが国の食生活習慣にも,健康志向の高いシニア層の食事内容の変化や,若年層を中心とした嗜好品の変化が認められる.柑橘系果物や炭酸飲料など多くの酸性飲食物が国民の食生活に習慣的に取り入れられ,酸蝕の問題は日々の臨床上無視できない状況にある.1a1b図11c1d1eCHAPTER1酸蝕症とはなにかtooth wearには,咬耗,摩耗,アブフラクション,酸蝕症が属する.細菌の関与のない,酸による化学的な歯の溶解が酸蝕症である.図1 tooth wear代表症例.咬耗(1a),摩耗(1b),アブフラクション(1c,1d),酸蝕症(1e).

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