知る・診る・対応する 酸蝕症
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052PART2酸蝕症を診る 口腔内診査においては,前述の唾液流路不良部位(→P47,図27参照)を中心に,全歯面に目が行き届くよう配慮する.酸蝕症は,酸が曝露する歯面すべてがその診査対象であり,う蝕の3大好発部位(歯頸部・隣接面・咬合面裂溝部)のように限局的なものではなく,(隣接面を除く)全歯面が対象となる.1視診でいかに発見するか 一般的に,酸蝕症の臨床評価は,視診により酸蝕状況(健全・エナメル質段階・象牙質段階)をレベル分け(スコア付け)する手法が用いられる.視診による評価単位は,口腔内全体を1歯単位で評価する場合や,口腔内を6分割して各分割エリアにおけるもっとも重症化している歯の所見を代表例として評価する場合などさまざまである. また,1歯における評価では,最低3歯面(唇側・頬側,切縁・咬合面,舌側・口蓋側)を観察し,一般的には,切縁・咬合面⇒唇側・頬側⇒舌側・口蓋側の順に評価される場合が多い.2酸蝕症の評価方法とは? 現段階において,酸蝕症評価のゴールデンスタンダードとなりうる国際統一された評価方法は存在しない.このため,各専門家間で評価方法(指標)が異なるのが現状である(→P23~27参照).現在のところ,酸蝕症に関する臨床研究・疫学調査に採用された評価方法による報告例を多数認めるが,臨床での対応方法は各国の国内事情・歯科事情により異なるため,全世界的に普及するには至っていない.3キャリブレーションの必要性 評価者が複数存在する診療所においては,あらかじめ酸蝕症の症例写真などを用いてスコア付けの練習を行い,評価者間における評価結果の一致率が(理想として)80%以上になるようすり合わせ(キャリブレーション)を行うことを推奨する.評価者間で結果が食い違った場合は,その場で協議を行い,どちらの見解に合わせるべきか討論を重ね,一致率の向上を目指す(→付録シート2参照).酸蝕症の評価練習用に! 巻末に「付録シート2」として,「酸蝕評価練習用例題」(キャリブレーション用口腔内写真)を用意した.個人的な評価練習用としてはもちろん,複数名で評価にあたる際,同資料を用いて事前にお互い練習し合い,共通の指標を持ち合わせて臨床評価に臨めるよう活用していただきたい.活用しよう!5-1 口腔内診査だけではわからない

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