知る・診る・対応する 酸蝕症
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064PART2酸蝕症を診る症例6酸性飲食物の混合摂取 いずれも酸性飲料(コーラ飲料,スポーツ飲料,黒酢)および酸性果実(オレンジ,グレープフルーツなど)の過剰摂取によるerosive tooth wear(酸蝕症と咬耗の混在症例)である(図40,図41).臼歯部では,エナメル質酸蝕が進行した場合,歯の輪郭を構成するエナメル質が溶解することで全体的に丸みを帯びた歯の形態となるほか(図40a),歯冠の破折をともなう場合もある(図40b).臼歯部における隣接面に及ぶ歯冠の破折症例では,冷水痛や自発痛のほか,食片圧入を主訴として患者が来院することで酸蝕症が発覚するケースも少なくない. さらに,象牙質段階の酸蝕症では,咬合面における象牙質露出にともない,患者が歯の色調変化を訴えたり(図40c),具体的な症状として冷水痛や咬合痛を訴えはじめる(図40d).後者は象牙細管の露出が原因と考えられ,比較的小さな露出面積でも顕著な症状を訴える場合がある(図41).erosive tooth wearにともなう咬合面象牙質の露出は,露出部の象牙細管が開口していることが報告されている7).また,露出した細管入口部が石灰化物などの沈着により封鎖される場合でも,酸蝕により溶解することで開口する可能性もあり,このような状況のもと知覚過敏を訴えるものと考えられる.知覚過敏が疑われる場合,歯頸部の診査に終始しがちであるが,このようなわずかな露出であっても知覚過敏が生じることを念頭に臨床対応する姿勢が望まれる.40a40c40b40d図40 酸性飲食物の混合摂取症例.全体的に丸みを帯びた歯の形態(外形)を示す症例(図40a),象牙質露出に加え歯冠破折を認める症例(図40b),咬合面における象牙質露出にともない患者が色調変化を訴えた症例(図40c),患者が冷水痛および咬合痛を訴えた症例(図40d).図41 酸性飲食物の混合摂取症例.35歳男性.下顎第一大臼歯の冷水痛を訴えた.咬合面にわずかな象牙質露出を認める(矢印部).臼歯部における知覚過敏では,歯頸部周囲の診査に終始しがちであるが,酸蝕症では咬合面のわずかな象牙質露出も見逃さぬよう留意する必要がある.41
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