歯内療法を再考する
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炎症治癒歯髄壊死炎症外傷図2 歯髄壊死は「炎症」もしくは「外傷」により起こりうる.歯髄壊死の状態から微生物感染を生じると,結果的に根尖性歯周炎が発症する.図4 根尖部のX線透過像.根尖性歯周炎は,細菌を中心とした微生物感染に対する宿主免疫応答である.根尖性歯周炎だけでなく,歯周炎またはインプラント周囲炎も同様である.図5 根尖性歯周炎の発症と治癒の関係性.このシーソーを治癒の方向に傾けてあげることが求められる.微生物根尖性歯周炎歯髄炎図3 硬組織内で炎症が生じると,同部の内圧は亢進し,歯髄血管,特に細静脈を圧迫し,血流が阻害される.結果的に歯髄血流は遮断され,歯髄組織は「血流がない状態」すなわち,壊死に至る(参考文献1より引用・改変).根尖性歯周炎の発生条件:Sundqvist formula of infection図6 根尖性歯周炎の発生条件(参考文献2より引用・改変). 3 歯内療法での活用②:レーザー 現在の根管治療においては,組織の機械的除去と化学的洗浄を行うことで根管内を洗浄している.根管除菌にレーザーの使用は有効であり,根管形成にも使用可能である.筆者自身,2022年より根管治療にレーザーを使用Part 1 歯内療法を成功に導くための最新トピックスHost immunity(宿主の免疫)歯髄壊死根尖性歯周炎LPS(内毒素)LTAsFimbriaeExotoxinsFlagella血流がないことることで,従来の超音波洗浄やシリンジ洗浄より約8〜10倍の組織溶解能を有し,滅菌精製水においても組織溶解能を認めた.これにより,従来の根管洗浄には#35以上の拡大が必要とされていたのに対し,GWSは#20で拡大された根管においても高い洗浄効果が期待できる. 各種報告からGWSの期待される治療効果をまとめると,イスムスの切削片,組織除去や複雑な根管系への高い洗浄効果,水酸化カルシウム製剤の完全除去,洗浄剤の根尖溢出リスクを低減することが期待でき,生活歯,失活歯ともに高い治療成功率が報告されている5.また機械的拡大の限界,歯根破折予防に対して,最小限の機Number of microoganism(病原微生物の数)×Virulence factor(病原性因子)械的拡大で最大の洗浄効果を得られる機器として世界的に注目を集めるとともに,術後疼痛を抑える効果も期待できるかもしれない.さらに臨床研究が豊富でなく合併症についての報告も少ないことから,今後の日本への導入に向けたさらなる研究の発展が期待される.25

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