Ccba(3)根尖狭窄部での放電 実際の根管では,通電すると根尖狭窄部で薬液が沸騰して気泡が発生することになる(図4).透明根管模型の根管壁を着色し,次亜塩素酸ナトリウムを満たして通電すると,ファイル先端部と根尖孔の間で気泡が発生し,気泡内に放電が生じて1秒で色素がほぼ脱色された2(図5).これは気泡内で放電することでプラズマとなりラジカルが発生すること,次亜塩素酸ナトリウムの温度上昇で活性が高くなること,放電にともなう温度上昇で色素が燃え尽きて灰化することの3つの効果が考えられるが,いずれの作用も強力な殺菌効果が期待される. 根尖部で太さが異なる2根管に分岐している場合でも,両根管で気泡の発生,放電が観察されることから2,側枝や根尖分岐なども短時間での殺菌が可能と考えられる.(4)根尖狭窄部の有機質灰化と殺菌 象牙質ブロックに直径0.1mm,長さ1mmの模擬根管を作製し,根管壁をプランクリュクロ液で5分間脱灰して厚い有機質層を根管壁に形成,生理食塩液または次亜塩素酸ナトリウムで根管を満たして高周波電流を通電した.その結果,5秒以内に根管壁の有機質層は消失し,多くの部位で象牙質が溶岩状になった3.すなわち約1秒でコラーゲンの燃焼温度約300℃程度まで上昇し,5秒でハイドロキシアパタイトの溶融温度約1,300℃に多くの部分が達していたと考えられる(図6). この模擬根管内に厚いバイオフィルムを形成する 1 高周波電流の根管内での発熱部位象牙質面100μm30μm図1a〜c ファイル接触部位での放電と象牙質面の溶融.ファイル先端での放電(a).放電部のSEM像(b,c)(参考文献1より引用).北海道大学大学院歯学研究院口腔健康科学分野歯周・歯内療法学教室象牙質片60Part 2-1(1)ファイル先端部の発熱 高周波電流は古くから電気メスとして使用され,歯内療法への応用も約50年の歴史がある.根管内への高周波電流のこれまでの応用は,電極先端部の発熱を利用する方法であった.すなわち,歯髄を電気メスで切除したり,電極先端部の温度上昇で殺菌したりするものである. 電極先端の温度をもっとも上げる方法は,生理食塩液や次亜塩素酸ナトリウムなど濡れた象牙質面にファイル先端部を接触させて通電することである.電極先端で放電が起こり,象牙質面は炭酸ガスレーザーやNd-Yagレーザーを照射した場合に類似した溶岩状となる1(図1).(2)根尖狭窄部の発熱 一方,根管内に導電性薬液を満たしてファイルを挿入し,通電した場合の各部の温度上昇を数値シミュレーションすると,ファイル先端部より根尖狭窄部の方がはるかに高温になり,薬液の沸点を無視すると1秒で2,000℃を超えた1(図2).電流値が一定の場合,発熱量は電気抵抗に比例し,電気抵抗は導体の断面積に反比例することから,根管の細い部分の方が発熱量は大きくなるということである. これをふまえ,ファイル先端の位置や電流量を検出して,歯周組織に傷害が及ばないように電流量を制御するシステムを組み込んだのがRoot ZX3高周波モジュールである(図3).菅谷 勉共催セミナーよりRootZX3によるファイル到達不可根管の焼灼
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