a図5a〜d 根管内の色素の分解.通電前(a).0.2秒後(b),0.5秒後(c),1秒後(d).緑矢印はファイル先端位置,黄矢印は放電部(参考文献2より引用).a図4a,b 根尖狭窄部における気泡の発生と放電.根尖狭窄部で電流密度が高くなり温度上昇が起こる(a),内用液が沸騰し気泡が発生すると気泡内で放電する(b)(参考文献2より引用).Part 2 歯内療法を成功に導くための最新マテリアル通電前0.2秒後0.5秒後1秒後根管放電Actinomyces naeslundiiを培養,付着させ,根管内に生理食塩液または次亜塩素酸ナトリウムを満たして3秒通電すると,いずれの根管でもすべての細菌が消滅したことから2(図7),高温により灰化,消失したと考えられる.(1)根尖狭窄部での歯髄の消失と変性 ビーグル犬の前臼歯の根管にファイルを挿入し,根尖孔には穿通せず,ファイル先端位置を根尖から2mm歯冠側として1秒通電すると,根尖分岐内の歯髄はほとんど灰化して消失し(図8a,b緑矢印),わずかに残存した組織も変性,壊死していた.通電しない場合(図8c,d)に比較すると,その違いは明らかであった.すなわち主根管に残存している歯髄は,ファイルの温度上昇や歯髄に電流が流れることによる直接的な変性に加え,根尖分岐で組織の連続性を失って壊死することになる.しかも歯根膜にはほとんど損傷がなかった. しかし,ファイル先端が歯根膜に達した位置で通電すると,わずか0.2秒の通電でも,1週後には歯根膜に強い炎症が生じており骨吸収もみられ,根尖分岐内には歯髄の残存もみられた.したがって,ファイルが歯根膜に触れた状態で通電することは避けなければならない.(2)術後疼痛の減少 抜髄時に高周波電流を通電した場合としなかった場合で,術後の疼痛がどの程度異なるかを後ろ向き観察研究により解析した.通電群と非通電群で歯種等の偏りが生じないように傾向スコアマッチングを行って比較した結果,通電により次回来院時の打診痛は約1/9,残髄と考えられるファイル挿入時の痛みは1/30に低下した. 抜髄時に出血が多い症例であっても,1秒程度の通電により根尖孔の穿通や根管拡大形成を行わなくても止血し,次回来院時に残髄した症例はほとんどなかった.ただし,出血が多い症例では電気的根管長測定が不安定になり精度も低下するため,通電時のファイル位置を確認61電極Φ0.4mm3mm生理食塩液4.5mm2mm根尖狭窄部Φ0.4mm1.0mm3641465156[℃]電極42.3℃(351.0℃)Φ0.1mm(2,589.0℃)38.1℃図2a,b 根管シミュレーションモデルによる温度上昇.先端3mmを除き絶縁コーティングした#40ファイル使用.根尖孔Φ0.4mm(a),根尖孔Φ0.1mm(b)(参考文献1より引用).根管狭窄部 2 抜髄への応用図3 RootZX3高周波モジュールの構成.①本体,②対極(口角用),③対極棒(手用),④チップ電極用ホルダー,⑤チップ電極用ファイルホルダー,⑥フットスイッチ(Root ZX3パンフレットより許可を得て引用).気泡気泡②③④⑤ab①⑥bbcd
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