QDI 9月
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Learn The Basics of ImplantLearn The Basics of Implant このご質問に一言で答えることは困難です。上顎洞底挙上術を行う歯科医師の技量を考慮しなければならないからです。 歯科医院を訪問すると、待合室によく「○○学会認定医」であるとか「○○学会専門医」といった認定状が掲げられています。しかし、これらの認定状はその歯科医師の技量を保障するものではありません。単にそれぞれの学会が課した最低限のノルマを果たしたという証明書にしかすぎません。ある方の著書に、ある特定の学会の認定医は信頼できると書かれていましたが、私はその意見に賛同できません。 上顎洞底挙上術を施行する医療施設が個人のクリニックなのか総合病院なのかといった点も、上顎洞底挙上術を行っていいのか、行ってはいけないのかを判断するうえで重要です。個人のクリニックで全身疾患を持つ患者さんに対して上顎洞底挙上術を行う際には、慎重を期さなくてはいけません。全身疾患の種類や重症度によっては、個人のクリニックでインプラント治療を行うことを全面的に断念せざるをえなくなることもあるかもしれません。 上顎洞底挙上術を行ってはならない局所の要因としては、以下のようなものがあります。①隣在歯に(根尖性)歯周炎や残根、歯根嚢胞が認められる症例(図1-a〜c)②上顎洞内に細菌感染があることが確実な症例 このような場合には、上顎洞底挙上術を施行する前に上顎洞内または歯槽骨内の感染に対する治療をまず行う必要があります。図1-a (根尖性)歯周炎()がある患者に対して、抜歯と上顎洞底挙上術が同時に行われた症例(55歳、男性)。術前の写真では、周囲に歯周炎による骨吸収像が認められる。図1-b の抜歯と同時に上顎洞底挙上術を行った1週間後に抜歯窩から排膿。ただちに再開創し骨補填材料を除去したが口腔上顎洞瘻が閉鎖せず(①)。当科受診時(上顎洞底挙上術3ヵ月後)、まだ上顎洞炎は続いており、骨補填材料も残っていた(②)。上顎洞自然孔は閉鎖している(③)(④は中甲介蜂巣(concha bullosa))。③①②④上顎洞底挙上術を行ってはいけないと考えられるのは、どのような症例でしょうか?Q1施術する歯科医師の技量にも関係してくるので一言では言えませんが、以下の症例が該当します。①隣在歯に(根尖性)歯周炎や残根、歯根嚢胞が認められる症例②上顎洞内に細菌感染があることが確実な症例③術後の粘膜浮腫によって上顎洞自然孔が閉塞する可能性が高い症例A1146Quintessence DENTAL Implantology─842
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