QDI 1月
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Way of thinking about antibiotic prophylaxis at tooth extraction―Aim at the control of antimicrobial resistance―インプラントのための抗菌薬インプラントのための抗菌薬インプラントのための抗菌薬抜歯時における予防抗菌薬の考え方―薬剤耐性菌制御を目指して―横江秀隆、中島純子(防衛医科大学校病院・歯科口腔外科)残根抜歯、重度歯周炎の抜歯、乳歯抜歯に対して必ず抗菌薬を処方する。親知らずの疼痛を訴える患者に対して、必ず抗菌薬を処方する。抜歯後疼痛が持続する患者には、抗菌薬を処方する。外傷による歯肉裂創、頬粘膜裂創(裂傷)に対して抗菌薬を処方する。感染根管治療中の咬合痛、根管の汚染に対して抗菌薬を処方する。歯周ポケットからの排膿に対して、必ず抗菌薬を処方する。インプラント埋入後、抗菌薬を長めに出さないと心配である。以下の項目にいくつ該当しますか?1つでも該当する方は、ぜひこの総説をお読みください。きっと目からウロコが落ちると思います。はじめに この総説では、特に抜歯、インプラント埋入などの歯科小手術に用いる予防的抗菌薬について解説する。抗菌抗菌薬は「薬と接した感受性菌の数を減らす」だけ 抗菌薬を内服しても、その抗菌薬に対する感受性がない細菌は死なず、感受性があっても投与した抗菌薬が目的の細菌のいる場所に効率よく運ばれていかなければ、細菌は死なない。逆に、治療の目的としていない細菌も、その抗菌薬に対して感受性があり、かつ抗菌薬に接すれば死ぬのである。「抗菌薬を飲むと下痢をする」という現象がそうだ。薬の薬理学的理論(PK/PD理論)や微生物(細菌)の話はそれぞれの専門書に譲り、ここでは、歯科の日常臨床で抗菌薬はいつ使うか、どのように使用するのか、その考え方を述べたい。 極論をいえば、抗菌薬は細菌の数を減らすだけの薬であり、熱がある、腫れている、痛いなどの諸症状を直接的に改善する効果はまったくない(注:厳密に言うと、マクロライドには炎症、免疫に対する作用、クリンダマイシンには細菌の産生する毒素の合成阻害作用がある)。ではなぜ熱がある、腫れている、痛い時に抗菌薬を出そうという動機が働くのだろうか。これは内科でもよく遭遇する。熱が出て喉が腫れて痛い、いわゆる風邪を引いたときに医者にかかって抗菌薬を出された、という読者も多いと思う。43─Vol.22,No.1,2015043

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