QDI 1月
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り高い術後感染予防効果は得られず、2日を超えての使用は術後耐性菌発生のリスクになる。国内の調査で、智歯抜歯後に1日投与と3日投与で抜歯後感染の発症に差はないという報告がある11)。したがって、抜歯時予防投与を行うなら、1日で十分と考える。数多くある抗菌薬の中から何を選べばよい? 歯科においては、セフカペンピボキシル(フロモックス®)、 セフジトレンピボキシル(メイアクト®)などの第3世代セフェムが頻用されている。第3世代セフェムはグラム陰性菌に強いがグラム陽性菌にはやや弱い。口腔内の感染症を起こす菌でもっとも多く検出されるのは、レンサ球菌(Streptococcus)でこれはグラム陽性球菌である。予防投与する抗菌薬の選択基準は、手術対象となる臓器で起炎菌となる細菌をカバーすることである。 この基準からすればまず、レンサ球菌をターゲットに考えることが必要で、グラム陽性球菌には、ペニシリン、第1世代セフェムが選択される。また、予防抗菌薬に第3世代セフェムは勧められていない。しかし口腔内のレンサ球菌は、第1世代セフェムのMIC(最小発育阻止濃度)が高いため、アモキシシリン(サワシリン®)が推奨できる抗菌薬の一つと考える。また、ペニシリンアレルギーがある患者に対しては、マクロライドが選択される。 アジスロマイシン(ジスロマック®)の水和剤は術前の単回投与でよいため、服薬コンプライアンスの点からすぐれている。また、アジスロマイシンは半減期が長く直前に服用する必要がないため、空腹時服用ということを考えて抜歯前日の就寝前の服用も可能である。ただし1割程度下痢・軟便になるため、患者に説明したほうがよい(表1、図3)。系統成分(一般名)代表的医薬品名(販売元)特徴・注意点などペニシリンアモキシシリンサワシリン®(アステラス製薬)・レンサ球菌に対して感受性が高く、抜歯時の経口予防投薬として選択される。・腎排泄。マクロライドアジスロマイシンジスロマック®(ファイザー)・ペニシリンアレルギーがある患者に対して適応される。・水和剤(ジスロマックSR成人用ドライシロップ®)は、術前の単回投与でよいため、服用コンプライアンスの点からすぐれている。・半減期が長く、必ずしも直前に服用する必要がないため、 抜歯前日の就寝前の服用も可能である。・1割程度の確率で下痢・軟便を生じるため、患者に説明をしたほうがよい。・肝排泄。第1世代セフェム・多くの手術における予防抗菌薬の第一選択として推奨されている。・最近、口腔レンサ球菌に対する第一世代セフェムのMICは高い(端的に言うと効きが悪い)。第3世代セフェム・グラム陰性菌に強いが、グラム陽性菌にはやや弱い。予防投薬でターゲットとなる口腔レンサ球菌はグラム陽性 菌であるため、あえて第一選択にする必要はない。●好気性菌●嫌気性菌フゾバクテイウム属ボルフィロモナス属ブレボテラ属旧ペプトストレプトコッカス属パルビモナスミクラ口腔レンサ球菌グラム陽性球菌グラム陰性球菌 グラム陰性桿菌 グラム陽性桿菌図3 歯性感染症のおもな起炎菌。抜歯部、切開部に存在する菌が抜歯後の手術部位感染に関与すると考える。つまり、口腔内の抜歯部位=好気性環境に多く存在する口腔レンサ球菌を予防投薬の対象菌と考える。表1 抜歯時に候補となるおもな抗菌薬とその特徴47横江秀隆、中島純子─Vol.22,No.1,2015047

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