QDI 2016年5月
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インプラントのためのインパクトの高い論文評価連載 インプラントのためのインパクトの高い論文評価 第8回のテーマはImplant overdentureである。質の高い論文を捉えるため検索キーワードをoverdenture and implantsとした。Implant overdentureはインプラントによって支持されるオーバーデンチャーのことで、おもに全部床義歯に用いられているが、部分床義歯にも応用される。超高齢社会を迎え、メインテナンスがしやすいことなどから注目されてきている。インプラントは単体あるいは連結されて用いられ、数種類のアタッチメントがある。インプラント支持様式、インプラント粘膜支持様式、粘膜支持様式に分類されるなどImplant overdentureといってもひとまとめで語ることは難しく、エビデンスに基づいた設計原則を確立することが求められている。一般社団法人 日本インプラント臨床研究会(CISJ:Clinical Implant Society of Japan)サイエンス委員会(田中譲治、岩野義弘、武田朋子、佐藤博俊、井汲憲治、水口稔之、若井広明、笹谷和伸、芦澤 仁)、塩田 真(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科インプラント・口腔再生医学准教授)Overdentureのための重要キーワードベスト論文第8回Implant overdenture検索キーワード1. 国内外におけるImplant overdentureの評価1)海外における評価 インプラントオーバーデンチャー(以下、IOD)は、1970年代にバーを用いた方法が報告されており1)、現在では、保険制度などの関係で国別に大きく差があるものの、インプラント補綴の選択肢として固定性インプラント補綴とともに広く用いられている。 IODは固定性インプラント補綴と比較して、少数のインプラントで高い治療効果が得られ、外科的侵襲が少なく、メインテナンスが容易で、治療費が低く抑えられる。加えて顎堤吸収が進んでいる場合には、フレンジによる顎堤復元によるリップサポート、審美修復、発音においても優位性がある。 また、2002年にカナダでは、下顎無歯顎に対して全部床義歯に替わり2本支台のIODを第一選択にすべきというMcGill Consensus2)が提唱されている。これを受けてイギリスでYork Consensus3)が決議されるなど、IODは全世界に広く普及してきている。2)国内における評価 国内においても古くからバーによるIODが使用されてきているが、メーカーのインフォメーションや教育において固定性インプラント補綴が中心となっていたためか普及が遅れているのが現状である4)。しかし、超高齢社会を迎え、メインテナンスがしやすいこと、顎堤保全のためにも、IODの有用性が再認識され注目されてきている。また、要介護を見据えて、固定性インプラント補綴を時期を見てメインテナンスしやすいIODに設計変更する必要性についても議論されはじめている。 日本人は、前後径が短くAP spreadが小さいため固定性インプラント補綴の設計には不利で、またおもに米食でもあるため、肉食・パン食である欧米人と比べIODでも食生活の不自由は少なく、義歯のフレンジにより食品を咬合面に運びやすいIODのほうが有利とも考えられる。アタッチメントについては海外に比べて、高性能の国産品があるためか磁性アタッチメントの論文も多く、高い評価を得ているのも特徴といえる。830411 ─Vol.23, No.3, 2016
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