Quintessence DENTAL Implantology 2022年No2
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北海道開業:市岡歯科医院 前歯部インプラント治療では欠損した歯の機能回復のみならず、審美性の回復も要求されるため、抜歯により失われた硬・軟組織の形態回復および長期安定性が重要な課題となる。そこで、本稿では形態回復されたそれぞれの組織の長期安定性を考察したい。長期症例の定義について、今回は「10年を経過したもの」としたが、5年以上の経過症例も参考に提示させていただく。20年以上前に知り得たコンセプトや術式、使用する材料など、長期経過は治療の正当性を評価してくれる。その結果は時に残酷であり、また新たな学びの機会を提供してくれる。今回は経過良好症例に限らず、不良症例も提示し、その原因と対応策、また現時点での治療計画立案におけるコンセプトの変化について述べてみたい。 本症例は筆者が長期観察できている前歯部インプラント治療の最長症例である。2002年に他院にて抜歯を行い、3ヵ月経過した後に受診した患者で、₁に対しインプラント埋入を行った。当時コーンビームCT(以下、CBCT)はまだ導入されておらず、デンタルおよびパノラマX線による画像診断と触診、ボーンサウンディング、模型分析などの検査のみで術前診断を行っていた。 術式の概要は、全層弁にて粘膜剥離を行い、骨面を確認しながら当時Tarnowらが提唱していた前歯部インプラントの理想的埋入位置を参考にインプラント埋入を行い、自家骨と吸収性メンブレンを用いて2回法にて手術を行った1)。二次手術時に結合組織移植術(以下、CTG)を行い、既製のジルコニアアバットメントをセミカスタムしたあとインプラントと締結し、アルミナコーピングのオールセラミッククラウンを装着した。その後、半年ごとのメインテナンスを行いながら経過観察していた。 15年目にセラミッククラウンの切端のチッピングが発生し、上部構造をジルコニアクラウンに変更することになった。その後、患者は心疾患にて一時、心肺停止状態となり通院不能かと思われたが、幸いにも奇跡的な復活を遂げ、19年目にCBCTにて経過観察することができた。 19年後の評価では、周囲組織の炎症はみられず、形態的評価でも治療終了時と比較してほぼ変わらず良好な結果となっ72Quintessence DENTAL Implantology─ 0244長期インプラント症例を再評価する市岡千春 Chiharu Ichiokaはじめに長期経過症例(19年経過症例:図1)前歯部インプラント治療の経過良好/不良症例から考察する唇側歯肉の形態維持

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