第3回インプラント周囲軟組織マネジメント概論AdvanceAdvanceab インプラント治療を終えた患者が直接評価するのは、たとえどんなにすばらしい骨増生処置を受けていても、補綴装置の出来栄えと、軟組織の外観のみである。また口腔内に露出し、清掃器具の外力に直接さらされるのも軟組織であることから、直感的に考えても軟組織マネジメントの重要性がわかる。口腔内軟組織の性質と量はフェノタイプ(バイオタイプ)と表現されるように、個人差があり(図1)、また同一個人のなかでも部位によって異なる1)。治療前の硬・軟組織の欠損状態、先行する骨増生処置によっても軟組織のコンディションは影響を受ける。さらに、供給側の条件も患者によって大きく異なる。そのため、インプラント周囲軟組織マネジメントは骨増生処置よりも複雑で考慮すべきことも多く、術前に完璧な手術計画を立案するのは容易ではないと感じている。 本稿では、軟組織マネジメントの目的と、必要な知識および技術を総論的に確認しておきたい。 軟組織マネジメントの目的は局所の数値的な評価で考えれば、角化組織の幅を増やすことと、軟組織の厚みを増やすことに大別される。実際の臨床ではインプラント治療の目的が部位ごとに異なるように、軟組織マネジメントの臨床的な目的も部位によって変わる。図1-a、b 10代の女性(a)は矯正後にリセッションが進行した。典型的なthinフェノタイプで、角化歯肉が存在せず軟組織も薄く、さらに退縮するリスクがある。一方、40代の男性(b)は典型的なthickフェノタイプで、骨過剰をともなった不完全萌出の状態。このように歯周組織のタイプは個人によって大きく異なる。110Quintessence DENTAL Implantology─ 0450はじめに軟組織マネジメントの目的と必要性石川知弘 Tomohiro Ishikawa静岡県開業:石川歯科インプラント治療のための硬・軟組織マネジメント 臼歯部における機能のための軟組織マネジメント 臼歯部においては、審美性よりも清掃性を高めることに重点が置かれる。2mm以上の角化組織の存在が清掃性を高め、健全性を維持することに寄与する可能性が高い。近年のシステマティックレビューでは2mm以上の角化組織が存在するほうが、骨吸収、BOP、退縮、プラークインデックスなどが良好な値を示すことが報告されている2)。 インプラント周囲炎を発症している158本のインプラントを調査したMonjeらの研究では、上顎前歯部の75%におい
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