Quintessence DENTAL Implantology 2022年No.4
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第4回上顎洞底挙上術時に必要な実践的手術解剖福岡歯科大学生体構造学講座機能構造学分野 准教授106Quintessence DENTAL Implantology─ 0618本連載の概要 鼻腔の周囲の骨に空洞を有するものが存在している。この空洞は鼻腔と交通する開口があり、鼻腔内の粘膜(多列線毛上皮)のつづきにより内面が覆われている。この鼻腔に開口する空洞は副鼻腔と呼ばれ、前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、そして上顎洞が同名の骨に存在することが知られている。 なかでも、上顎洞はこれら副鼻腔のうち最大で、上顎体(本連載第1回を参照)のなかに広く存在している。その大きさは、個人や年齢による差がある。鼻腔とは、半月裂孔(骨学的には上顎洞裂孔:図1)をもって中鼻道と交通している。さらに上顎洞の洞底と上顎臼歯部の根尖とはきわめて近接していることから(図2)、歯科治療上重要な部位で、臨床においても正確な知識が必要であることはいうまでもない。この上顎洞は洞腔の鼻腔側を底部とし、頬骨突起側を頂部とする錐体状(図3)を呈している。この鼻腔面側の底部に半月裂孔(上顎洞裂孔)が存在している。第1回 インプラント治療に必要な実践的解剖知識:概論第2回 下顎臼歯部へのインプラント埋入に必要な実践的手術解剖 この上顎骨の頬骨突起側を頂点とし、錐体状をなしている上顎洞の壁面を上顎骨の面に置き換えると、上顎洞の鼻腔側面(内壁)としての底部(面)「上顎骨の鼻腔面」、上顎洞の上壁としての眼窩面(上顎骨の眼窩面)、上顎洞の前壁としての前面(上顎骨の前面)、上顎洞の後壁としての後面(上顎骨の側頭下面)、そして上顎洞の下壁としての下面(上顎骨の歯槽突起部)の5側面となる。この上顎骨の頬骨突起側の頂部は、頬骨突起部に深く入り込み、上顎洞の発達によっては頬骨上顎縫合を越えて頬骨内にまで拡がっている場合も存在する。 上顎洞の壁において、前壁がもっとも厚く、ついで後壁、上壁の順で内壁がもっとも薄い。下壁は歯槽突起内に入り、その部位によって厚さが異なり、とくに大臼歯部付近では薄くなっていることは周知の事実である。また、この下壁には各歯槽(根間中隔や槽間中隔)によって隆起・窩(隔壁)がつくられている(図4)。さらに、これらの壁には、壁に沿って走行(向)する脈管・神経によって溝、管および孔が存在している。この代表として上顎洞の後壁には、この後壁を貫く上顎神経の枝の後上歯槽枝や顎動脈の枝の後上歯槽動脈の導通路第3回 下顎前歯〜小臼歯部への第4回 上顎洞底挙上術に必要な実践的手術解剖第5回 自家骨採取時に必要な実践的手術解剖第6回 画像診断から読み解く実践的手術解剖インプラント埋入に必要な実践的手術解剖Basic松浦正朗 Masaro Matsuura児玉 淳 Jun Kodama福岡歯科大学名誉教授日本口腔インプラント学会認定指導医インプラント臨床に役立つ実践的手術解剖上顎洞について

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