イエテボリ大学のBrånemark教授により提唱されたオッセオインテグレーテッドインプラントは、動物実験の後、1965年に初めてヒトに用いられ、機能ならびに審美の回復が図られた。その良好な結果から欠損補綴におけるパラダイムシフトが起きた。当初は無歯顎患者に応用され、その後、部分欠損患者にも用いられるようになった。現在では、無歯顎で25年後の成功率83.8%、残存率93.3%1、部分欠損で25年後の成功率90.3%、残存率95.3%2という値の高さから日常臨床に不可欠な治療方法となっている。 しかしながら、インプラントの埋入に際し、上顎臼歯部では上顎洞、下顎臼歯部では下顎管やオトガイ孔の近接という解剖学的形態によりインプラントの埋入自体が困難なケースが存在する(図1)。 筆者がイエテボリ大学歯周病科に留学した当初(1988年)、スウェーデンではインプラントの埋入は口腔外科医と歯周病医が、上部構造は補綴医が担当し、それぞれの専門医が連携しながらインプラント治療を行っていた。しかし、イエテボリ大学歯周病科ではインプラント治療を行っていなかった。そこで筆者はGothenburg Specialist Group For Dental Im-plantの口腔外科医Dr. Jan Hirshと歯周病医であり補綴医でもあるDr. Ingvar Ericssonのもとでトレーニングを受けた。1990年に入ると歯周病科でもアストラテックインプラントの研究機関としてLindhe教授、Wennström助教授らの手によってインプラントの埋入手術が開始された。 さてイエテボリ大学の歯学部では、当時解剖学的制約により骨量が少なくインプラント埋入が困難なケースへの対応策として、上顎洞の近接したケースは、医学部のSahlgrenska病院へ送られ、全身麻酔下で外科医が腸骨を切除し、口腔外科医により腸骨移植をともなう上顎洞底挙上術(サイナスリフト)を行っていた。また、下顎管の近接したケースへは、こちらも口腔外科医によるinferior alveolar nerve lateral transposition4(下歯槽神経側方移動術)により対応していたが、どちらも治療費用の増加、また外科的な侵襲も非常に大きく、Nerve transpositionにおいては多くのケースで術後の神経麻痺を目にした。一方、歯周病医はサイナスリフトや骨造成を行っていなかったため、解剖学的制約があるケースへは、ショートインプラントが当時はなかったこともあり、上82Quintessence DENTAL Implantology─ 0770東京都開業:スウェーデンデンタルセンター弘岡秀明 Hideaki Hirooka 折居雄介 Yusuke Oriiはじめに長期インプラント症例を再評価する上顎洞底を避けて傾斜埋入したインプラントの長期予後
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