Quintessence DENTAL Implantology 2022年No.6
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第6回上顎臼歯部における硬・軟組織マネジメント 前編る7、8。30年以上前に筆者(石川)がこの処置を初めて知った時は、一般の診療で歯科医師が行う施術ではないように感じられたが、現在では上顎臼歯部にインプラント埋入を行うためには不可欠な処置となっている。96Quintessence DENTAL Implantology─ 0968Advance 上顎臼歯部は、上顎洞の存在によって十分な骨高径がない場合が多く、さらに抜歯によって上顎洞は下方に向かって拡大する。また、抜歯の原因が歯周病や歯根破折からの感染など歯槽骨の吸収をともなっている場合、歯槽堤の高さはさらに減じ、骨高径が1mm前後となる場合もある1、2。しかしこのような状態であっても、上顎洞底挙上術を用いて十分な骨量を獲得することによってインプラント埋入が可能となり3〜6、上顎臼歯部において強固な咬合支持を確立できる。 現在までに多くの改良が加えられ、側方からウィンドウを形成する従来のラテラルアプローチと、歯槽頂のインプラント形成窩から上顎洞にアクセスするクレスタルアプローチがあり、それぞれのメリットを活かした選択が可能となってい図1-a 初診時側方面観。患者はパーシャルデンチャーの機能に満足していなかった。図1-b 同X線写真。隔壁の存在が予測される。図1-c ウィンドウを大きく開窓し、隔壁を越えて上顎洞粘膜を挙上した。上顎臼歯部のインプラント治療と上顎洞底挙上術石川知弘 Tomohiro Ishikawa荒木康智 Yasutomo Araki東京都:鼻のクリニック東京(耳鼻咽喉科医)静岡県開業:石川歯科インプラント治療のための硬・軟組織マネジメント 上顎洞底挙上術の治癒について理解の助けになった症例上顎洞底挙上術の治癒について理解の助けになった症例 ここで、筆者にとって貴重な経験となった症例を紹介したい(図1)。患者は51歳の男性(耳鼻科医師)、左側の上顎洞をご本人の希望で、骨移植材として乳様突起をバーで削合して採取した自家骨を抗菌薬の溶液で洗浄し、自己血から生成したフィブリン糊で固形化して使用した。 ウィンドウには側頭筋膜を使用し閉創した。手術は患者本人のクリニックの手術室で、2名の耳鼻科医師と共同で行った。問題なく経過し、8ヵ月後にインプラント埋入のために

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