3演者論202文 現在、インプラントの臨床は咀嚼機能という点では十分なコンセンサスが得られていると考えられる。したがって10年、そして20年以上問題なく機能する症例に遭遇することも日常的である。しかし、こうした症例は臼歯部での機能を論じるもので、審美性の面で軟組織の存在が重要となる前歯部での長期症例においてはいまだ不明な点も多く、とくに連続埋入の場合、確固たる臨床術式が存在しないことも事実であり、それぞれの臨床家の工夫により臨床が行われている状況であることは否めない。 今回報告する患者は2004年初診、約1年半で治療を終え、現在術後約17年経過している。幸い再治療に至った部位は認めないものの、初診時上顎前歯部に5本の欠損があり、その審美性の獲得に苦慮した症例である。また、本症例は最終補綴装置装着直前のプロビジョナルレストレーションまでのステップを『インプラントYEARBOOK 2006』1に掲載している。患者:45歳、女性初診:2004年7月主訴:審美障害および咀嚼不良による他院からの紹介1)治療計画①歯の保存に対する治療計画 患者は全顎治療を希望していたが、紹介元の前医に患者の意向を再確認し、残存歯の保存および欠損部へのインプラント治療を行うこととした。抜歯は極力避けるが、歯根吸収が著しい₇₈は抜歯することで同意を得て、₆₇にインプラント補綴を行うこととした。歯根破折が認められた₃および同じく疑われた₇はNd:YAGレーザーによる治療で対処する方針とした。とくに₃はサイナストラクトをともない骨欠損もあることから治療に苦慮する可能性もあったが、初期のレーザー照射で早期にサイナストラクトが消失したこともあり、患者は保存に意欲を示すという経緯があった。この₃の骨欠損はインプラント補綴を計画した前歯部の手術に88Quintessence DENTAL Implantology─ 0088東京都開業:上北沢歯科インプラントの審美性症例の概要(図1〜41)長期インプラント症例を再評価する術後17年の観察から行田克則 Yoshinori Nameta上顎前歯部5本連続埋入における長期症例
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