3演者論202文ba図1-a、b 炎症が波及したインプラントの除去は容易に行える。図2 要介護者の食事の一コマ。徹底したプラークコントロールは不可能である。0103 ─Vol.30, No.1, 2023103 インプラント治療は、以前は一部の歯科医師が手掛けるリスクのある治療として扱われていましたが、現在では予知性の高いすぐれた治療となっています。しかし、患者さんの将来の要介護状態を見据えるとまだまだ問題視されてしまうことも否めません。歯科訪問診療が広まりつつあるなか、われわれはインプラントロジストとしてどのような対応を取っていけばよいのでしょうか。 本リレーエッセイでは、この分野に造詣の深い先生方に要介護高齢者を見据えたインプラント治療や歯科訪問診療におけるインプラントメインテナンスに対する思いを語っていただき、読者の先生方がインプラント治療を見つめ直す機会となれば幸いと企画されました。 要介護状態の口腔内においては、インプラントは咬傷の原因となったり炎症を引き起こしたりするなどと、インプラント治療を否定的に受け取られてしまうことがあります。しかし残存天超高齢社会の今、インプラントメインテナンスの現場はクリニック内だけに留まりません。本リレーエッセイでは、歯科訪問診療に造詣の深い著者陣にそれぞれの視点からインプラント治療への思いを語っていただき、読者の先生方がインプラント治療の予後をひろく考えるきっかけとなれば幸いです。然歯においても同様のことが起こる可能性はあります。 また、インプラントは除去が難しいと思われがちですが、炎症が波及したインプラントにおいては図1に示すように容易に除去することができ、かえって残存天然歯のほうが、形態が複雑でプラークコントロールが容易ではなく、加えて、う蝕になるなど扱いは難しいとも考えられます。要介護者のプラークコントロールの目的は、歯周病やう蝕の予防よりも、舌の清掃も含め誤嚥性肺炎の予防と考えたほうが現実的で、この意味においてもインプラントと天然歯は同等と考えられます(図2)。 ただし簡単に除去できるインプラントでも、スクリュー固定でなくセメントによって他のインプラントと連結されている場合には、外すことができず問題を引き起こすことがあります。ま田中譲治 Jyoji Tanaka 千葉県開業:田中歯科医院た、一般的にインプラントは血管やコラーゲン線維の量・走行などから天然歯と比べて周囲炎になりやすいといわれていますが、完全にディスインテグレーションするまでは動揺がないため炎症が波及しづらく、口腔内にインプラントだけが残存することにより、咬傷などの問題を引き起こすことがあるため注意が必要です。できれば設計を変更しやすいスクリュー固定にしておくことや、不必要に長いインプラントを使用しないことが望まれます。 次に、メインテナンスだけを考えれば全部床義歯のほうがよいと思われがちですが、全部床義歯の維持安定は、辺縁封鎖による吸着・密着や両側性バランスをはじめとする咬合様式によるだけでなく、舌や頬粘膜による運動制御機能がはたらいて維持安定しているといわれています。認知症が進むとこの運動制御機能が低下し、良好であっインプラントを最後まで見届ける。@歯科訪問診療リレーエッセイリレーエッセイをはじめるにあたって要介護高齢者におけるインプラントと残存天然歯#1通院でも訪問でもインプラントを一生涯フォローできるシステムを
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