Quintessence DENTAL Implantology 2023年No.3
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患者�����様は宇治山田歯科医院に定期健診で来院していただいております。 ご存知のように日本は高齢化社会を迎え、世界有数の長寿国となっています。 しかしその一方で、すべての方が最期までおいしく食事ができ、お口にトラブルなく 生涯を終えられるとは限りません。 �宇治山田歯科医院は、開院当初から訪問歯科診療を行い、在宅や施設で寝たきりの方や通院できない患者さんの治療や口腔ケアをしています。今後ももちろん医院として継続していく所存です。 �現在お元気に通院されている方も、将来には高齢になり体調に変化がみられる可能性があります。また、残念ながら認知症やご病気が原因でご自身の意思を伝達できなくなってしまう方もいらっしゃいます。 �われわれは訪問診療で、そのような患者様に接し、治療や口腔ケアを行ってきた経験から自分たちの行ったすべての治療に責任をもつことの重要性を感じております。 �もし万が一、通院が困難になった時もわれわれは責任をもって、お口の中のトラブルへの対処や定期的な口腔ケアを行うことで、生涯を通してお口の健康維持をサポートしたいと考えています。 �寝たきりになったり、認知症や予期せぬご病気になることは、誰にでも起こる可能性があります。そういった場合の口腔ケアは、食べること、飲み込むことの機能の維持や 誤嚥性肺炎の予防に欠かせません。 �そこでお元気な現在に、失礼を承知でこのお手紙をお近くのご家族にお渡ししていただくように、ご本人へ依頼させていただきました。 通院が困難になった際は、どうかわれわれにお声がけください。 そして今後も引き続きお口の健康維持サポートしてまいりますので、ご協力のほどよろしくしくお願いいたします。 医療法人宇治山田歯科医院 院長�片山�昇 令和��年��月��日 定期健診で来院の患者様のご家族へ すべての通院患者+αを対象にほぼ毎日稼働中0459 ─Vol.30, No.3, 2023103 大学を卒業した後は、総義歯治療で高名であった故・中尾勝彦先生(広島県尾道市)に師事し、私の歯科医師人生がスタートしました。中尾先生は、まだ歯科訪問診療が一般的ではなかった当時から訪問診療に出られていました。中尾先生が常日頃から言っておられた「自分の治療に対して最後まで責任をもてる歯科医師になりなさい」という言葉を今でも覚えています。この方針のもと、2人で毎週木曜日に訪問診療に取り組んでいました。当時の尾道市は、私の出身地である三重県伊勢市と人口や年齢の構成が似ており、すでに高齢化が始まりつつありました。 開業後、外来では日々、前歯部審美領域のインプラント治療などテクニックセンシティブな症例に取り組む一方、中尾先生の言葉のように、その治療結果に対して最後まで責任をもてるよう、訪問診療に自分自身が出向くのを欠かしたことはありません。今は開業してすでに15年を超えましたが、統計データが示す高齢者におけるインプラント装着者(2016年度は65〜69歳で推計47万人1)の増加を日々の臨床において実感しています。超高齢社会の今、インプラントメインテナンスの現場はクリニック内だけに留まりません。本リレーエッセイでは、歯科訪問診療に造詣の深い著者陣にそれぞれの視点からインプラント治療への思いを語っていただき、読者の先生方がインプラント治療の予後をひろく考えるきっかけとなれば幸いです。 当院では、歯科医師、歯科衛生士、そして事務処理と診療補助を担当するコーディネーターが、基本的に3人1組でチームを構成し、3台の往診車で日曜日と祝日以外の毎日稼働しています。歯科医師は私と勤務医4名が交替で診療にあたっています。 当院に通院しているすべての患者さんはもちろん、他院に通院していて施片山 昇 Noboru Katayama 三重県開業:宇治山田歯科医院図1 70歳以上の外来患者の家族に渡している手紙の1つ。万が一、要介護者となっても、われわれが行った治療に対する生涯を通じたフォローアップと口腔ケアの重要性を伝えている。設または在宅で介護が必要となった方も依頼があれば対象としています。 また、70歳以上の外来患者さんには、訪問診療の案内と口腔ケアの重要性を記載した手紙を渡すようにしています(図1)。現在健康な方には失礼かもしれませんが、生涯にわたってサポートすることを伝えるため、そして、口腔ケアの重要性を要介護になる前にご家族に知っておいてもらうことが必要だと考えています。インプラントを最後まで見届ける。@歯科訪問診療リレーエッセイ恩師の言葉を胸に取り組み続ける訪問診療#3外来診療で埋入したインプラントが最後まで機能するために

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