Quintessence DENTAL Implantology 2023年No.3
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第9回下顎前歯部の硬・軟組織マネジメント テクニック編石川知弘 Tomohiro Ishikawa静岡県開業:石川歯科3演者論202文AdvanceAdvance 前回は下顎前歯部におけるインプラント治療の難易度について検討した。特にクラウンブリッジタイプの補綴装置を選択した場合、インプラントの埋入ポジションと硬・軟組織マネジメントに高い精度が求められる。今回は症例を通して、下顎側切歯および中切歯の連続欠損に対するインプラント治療のテクニックについて解説したい。た、歯冠のサイズが他の部位よりも小さく、繊細な操作が要求されるため、骨造成は三次元的な目標に向けて精密に行われることが求められる1。120Quintessence DENTAL Implantology─ 0476インプラント治療のための硬・軟組織マネジメント はじめに下顎前歯部における硬・軟組織マネジメントのテクニック症例概要 患者は34歳の男性。4ヵ月前に外傷により₂₁を失った。部分床義歯を一時的に装着していたが、審美的・機能的な向上のために固定性補綴を希望し、紹介によって来院された(図1)。患者は会話時に下顎前歯部の組織が露出することを認識し、審美領域であることに気付いていた。そこで、治療結果は可及的に反対側の残存歯の外観に調和させること、つまり歯のサイズ、方向、ローテーションなど反対側に同調させることを望んでおり、ラッピングによるスペース調整は許容できないとのことであった。このような患者の要求が高い症例の場合、インプラントポジション、硬・軟組織のマネジメント、修復物による軟組織形態の調整のすべての処置を精確に行う必要がある。 下顎前歯部は前述したとおり重要な審美領域であり、時として上顎よりも露出頻度が高くなると筆者は考えている。まフラップデザイン 前歯部においても基本的には臼歯部と同じコンセプトでフラップデザインが決定される。瘢痕を隠すため、縦切開線は₃₃の遠心に設定した。舌側は基本的に縦切開を入れず、水平切開を2〜3歯延長する(図2)。それでも減張量が不足する場合に縦切開を加える。切開 臼歯部と同様に唇側、舌側に十分なテンションをかけ、角化組織の中央を軟組織表面に対して垂直に切開する。均一な切開面を形成することが重要である(図3)。剥離 フラップの剥離は、軟組織にダメージを与えないように繊細な操作が求められる。特に骨膜を断裂させないこと、残存歯周囲に軟組織が取り残されないようにすることが重要。そのために骨膜を確実に切開し、鋭利な剥離子の先端を骨面上に確実に到達させ丁寧に起こしていく。また、骨内欠損部は欠損辺縁に沿ってメスにより鋭的に剥離する(図4)。

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