Quintessence DENTAL Implantology 2023年No.4
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3演者論202第10回上顎前歯部における硬・軟組織マネジメント文AdvanceAdvance 人間にとって上顎前歯を喪失することは、社会生活を営むうえで大きな障害となる。歯周病、インプラント周囲炎の進行、ブリッジの支台歯の破折による感染、外傷などによって、多数歯にわたり歯槽骨、軟組織ごと上顎前歯を失った場合、その治癒形態を見るたびに患者は喪失感を抱くため、その精神的なダメージは大きい。また、たとえインプラントが埋入できたとしても、審美性、発音機能が大きく損なわれてしまえば患者は不幸せになる。 上顎前歯部のインプラント治療、特に複数歯欠損における審美性の回復は、たとえ抜歯前に周囲組織が健全であっても容易ではなく、硬・軟組織が不足していれば失われた組織と審美性の再建はさらにチャレンジングなものとなる1〜4。本稿では、上顎前歯部における再建的な審美インプラント治療に関して、検討していきたい。 患者の審美性に対する要求度はさまざまである。術前の状態、社会的な背景も大きく影響するであろう。術前に実現可能な審美的なゴールについて共通の認識をもっておくことは非常に重要である。安易に理想的に仕上げられたワックスアップモデルや、デジタル画像をゴールにしてしまうと、治療後にトラブルとなるリスクがある。インプラント治療の限界と可能性について十分説明し、ピンクマテリアルを使用するか、クラウンブリッジタイプとするかを患者とともに検討する必要がある(図1、2)5。 Kokichら6は矯正医、歯科医師、一般人300名に対するアンケートによって軟組織形態について魅力的でないと認識する閾値を調査し、正中の歯間乳頭は鼓形空隙の大きさが矯正医は2mm、歯科医師と一般人は3mmであり(図3-a〜c)、片側の中切歯側切歯間の乳頭レベル(ロングコンタクトによってブラックトライアングルなし)は、歯科医師が0.5mmで気付き、一般人は2mmでも認識しなかったことを示した(図3-d〜f)。また、左右対称に歯間乳頭が低下しロングコンタクトになっている場合、矯正医が1mm、一般人は1.5mm、歯科医師は2mmでも認識しないという結果も報告している(図3-g〜j)7。非常に興味深いデータであるが、ベースラインの状態は個々の患者でさまざまで、歯間乳頭高径が3mmロスしてもスキャロップが残っている者もいれば、ほとんど平坦化してしまう場合もあるだろう。 一方、最大スマイル時に歯間乳頭の露出によって判断されるInterdental smile lineの調査では、420名中380名(91%)の患者において一部でも歯間乳頭が露出する、つまりHigh interdental smile lineを有することが報告され、歯頚線を露出しないLow smileにおいても87%は、歯間乳頭の一部が露出するHigh interdental smile lineを有することが示され、治療前の診断の重要性が示唆されている(図4)8。120Quintessence DENTAL Implantology─ 0656はじめに術前のゴール設定インプラント治療のための硬・軟組織マネジメント 石川知弘 Tomohiro Ishikawa静岡県開業:石川歯科

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