Quintessence DENTAL Implantology 2023年No.5
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ントを含めた補綴コンポーネントの多様さ・インプラント‐アバットメント締結部のデザインと締結後の機械的安定性術者が考慮する点としては、・適切なインプラント間の三次元的埋入ポジション・必要十分の三次元的硬・軟組織量・補綴コンポーネントのインプラント体からの着脱回数とアバットメントを含めた上部構造のカスタムデザインが挙げられる。これらの要素が1つ欠けるだけでEstheticalStabilityには多少なりとも影響が及ぶ。 本稿では、特に補綴コンポーネントの着脱回数について述べ5、6、筆者のチームが行っている着脱回数を最小限度にとどめる補綴方法7の一手法を供覧する。 一方で、臨床家として経験を重ねていくと、自ずと咬合にも目が向くであろう。なかでも歯周疾患発症のトリガーを引いている不正咬合を軽視や無視することは看過できない。よって、不正咬合患者には現状を説明し、インプラント治療や歯周治療などの局所的治療とともに、咬合治療に対する意思の確認をとらなければならない。臨床論文38Quintessence DENTAL Implantology─ 0754はじめに 前歯部多数歯欠損に対して複数本のインプラントを隣接埋入し、極めて良好な審美的結果を維持するための絶対条件は、十分なインプラント周囲硬・軟組織の再建1〜4であり、スキャロップ形態を含めた見かけの軟組織形態の裏打ちとなるインプラント周囲骨の維持であろう。 そのためにインプラントシステムが具備すべき点としては、・組織侵襲の少ないインプレッションシステムやアバットメ症例供覧 患者は2014年5月初診の60歳、女性。高血圧症の既往があり、咬合の不調和と審美障害を主訴に来院した(図1〜3)。骨格性AngleⅡ級の不正咬合と診断した。矯正治療を主軸に、歯周治療、インプラント治療、補綴治療を含めたインターディシプリナリー・アプローチによる全顎治療の計画を立案した。 不正咬合を有する患者のゴールとして、筆者のチームは絶対的に患者自身による再現性のある適切な顆頭位を基準にする安定的な咬合位(CRO≒MIP)の獲得を目標としている。理想的には犬歯関係Ⅰ級を含めたアンテリアガイダンスが行える上下顎前歯被蓋関係の確立を目指す8が、顎変形症などの症例によっては妥協せざるをえない場合も少なくない。その場合でも、犬歯誘導による臼歯離開咬合の獲得を目指し、成人においては矯正治療後に顎位咬合安定のために咬合調整を行う場合や、生理的な歯の形態回復のための補綴処置を必要とする症例も少なくない。 失活歯の抜歯基準は術者や背景によってさまざまであろう。かつて筆者は是が非でも患者の要望を叶えるために歯の保存を試みていた時期もあったが、短期間で抜歯を余儀なくされる症例を多く経験してきた。本症例の上顎前歯は、歯軸が極度にフレアアウトしたシビアなオーバージェットである。また、残存歯すべてが失活歯でフェルールの不足および不良歯質などの問題を有し、矯正的にリトラクションができたとしても適切なアンテリアカップリングを得ることが難しく、予知性に疑問があった。よって患者の年齢や要望なども加味し、抜歯してインプラントによる修復処置を行うことで患者の同意を得て治療を進めていった(図4〜7)。鈴木健造 KenzoSuzuki東京都開業:健造デンタルクリニック大特集咬合崩壊をきたした骨格性Ⅱ級症例に対して、インターディシプリナリー・アプローチのなかで前歯部インプラント治療を用いて咬合改善を行った一症例

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