Quintessence DENTAL Implantology 2023年No.5
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東京都開業:神田歯科医院98Quintessence DENTAL Implantology─ 0814 2023年は、Brånemarkによって歯科にインプラント治療が臨床応用されてから約60年の歳月が経過する。その間にインプラント治療が歯科界に及ぼした影響はあまりにも莫大で、はかりしれない。そのようななか、インプラント治療には近年新しい展開が生じている。それは、インプラント体を埋入後、長期間を経て確認されてきた臨床的な諸問題や患者の高齢化、そして術者の高齢化などである。 インプラント治療に時間軸を加味するならば、オッセオインテグレーションの獲得とその持続・永続には異なる要素が関与している。オッセオインテグレーションの獲得は比較的短期に結果が得られ、インプラント体のスレッドデザイン、表面性状、インプラント体とアバットメントの接合様式・デザイン、インプラント体の長さ・直径、ヒーリングアバットメントの形態、補綴用アバットメントの形態など、工業的テクノロジーに関する要素が多分に影響を及ぼすと考えられる。一方、オッセオインテグレーションの持続・永続には、細菌学的に劣悪な場所の1つとされる口腔内環境の改善、治療にあたる歯科医療従事者の姿勢や能力、そして患者固有の生活習慣など、テクノロジーでは到底表現できない要素が大きく影響すると感じている。 さて、2018年の厚生労働省発表のデータによると、患者が天然歯を失う原因は、1位が歯周病(37%)、2位がう蝕(29%)、3位が破折(18%)である1。歯周病とう蝕は合わせて7割近くとなり、歯科の2大疾患といわれる所ゆえん以である。どちらも細菌が原因である。しかし、「メインテナンス中に限って」と条件を付けると、他に大きく差をつけて1位が「歯の破折」であった2。破折の原因は細菌ではなく、力である。よって、天然歯とインプラント上部構造が混在した口腔内の良好な長期的経過を得るためには、力への対応が必須と筆者は考える。 本稿では筆者の拙いインプラント臨床を振り返り、その経過のなかで「確認」「確信」に至った見解についてお伝えしたい。インプラント治療計画の概要 インプラント体埋入までに行う外科処置は、顎骨内という限られた空間を対象とするために、手間と根気と熟練が必要となる。また、インプラント治療の結果は、補綴治療、歯周治療などの他分野の治療とも密接に結びつく。しかしながら現在でも、インプラント治療の目的は従来の補綴治療の目的はじめに長期インプラント症例を再評価する松島正和 Masakazu Matsushima長期経過から学ぶ力の適正配分を中心とした歯科臨床の実像

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