Quintessence DENTAL Implantology 2023年No.5
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第11回経過観察時に上部構造に生じる補綴関連の問題事象とその対応3演者論202文 最終上部構造を装着後、良好に機能していても経年的に何らかの問題事象が生じることは避けられない。今回は、装着後に生じるさまざまな補綴関連の問題事象を紹介するとともに、その対応策について解説する。 最終上部構造装着後、さまざまな補綴関連の問題事象が生じる。Goodacreら1は、2001〜2017年に報告された補綴関連の問題事象について文献レビュー(74論文)を行った結果、固定性上部構造では9種類、可撤性上部構造は17種類の補綴関連の問題事象が報告されていたとしている(図1)。このうち、可撤性上部構造に関連する項目には、義歯調整、床裏装や義歯再製など、問題事象とはいえないものも含まれているとはいえ、上部構造の破折、補綴/アバットメントスクリューの緩みや破折など、問題を生じた場合に速やかに対応しなければならない事象や、コンタクトロスといった経年的な変化が一定の割合で生じることが理解できる。 実際には、口腔内環境(咬合関係など)、患者因子(咬合力など)、そして補綴設計(材質やインプラントの本数/配置など)によって発生する問題事象とその頻度は異なる。ここからは、代表的な問題事象とその対応を挙げたい。116Quintessence DENTAL Implantology─ 0832Basic前装材料のチッピングや上部構造自体の破折 前装材料のチッピング(図2)は、数多くの論文で頻度の高い問題事象として報告されている。発生頻度は上部構造の規模により異なる。単独歯欠損修復では5年間の累積発生率が6.5%である一方で、部分欠損に対する補綴装置では22.8%、フルアーチの補綴装置に至っては34.8%と非常に高い2、3。 前装材料のチッピングを引き起こす原因は、機械的要因と患者要因に分けられる。機械的要因には、インプラントポジション、前装材料自体の厚みやアクセスホール周囲の厚みの不足、前装材料の種類、フレームワークデザイン、咬合様式や対合歯の状態などが挙げられる。また、患者要因としては、発揮される咬合力やパラファンクション(クレンチング/ブラキシズム、TCH;Tooth contact habitなど)の存在が主となる。 インプラントは被圧変位がほぼなく(3〜5μm)、歯根膜を有する天然歯とは異なり、前装材料のチッピングを完全に防ぐことは難しい。可及的にその発生を防ぐためには、機械的要因に対して歯科技工士と綿密な連携をとって可能な限りの配慮を行うとともに、ナイトガードの装着などの患者要因の管理も重要となる。モノリシックジルコニアを用いた上部構造は、チッピングの発生が少ないことが報告されているため、チッピングのリスクの高い患者には、その適応も検討する(図3)。 なお、チッピングが生じた際は、原因を慎重に検討したうえで、規模が小さく、機能的/審美的に問題がなければ研磨Basicはじめに最終上部構造装着後に生じる補綴関連の問題事象和田誠大 Masahiro Wada大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学分野大阪大学歯学部附属病院 口腔インプラントセンター初学者のためのインプラント補綴設計

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