Quintessence DENTAL Implantology 2024年No.1
4/9

 複数の上顎臼歯が失われた症例にインプラント治療が施された場合、咬合支持を再構築することにより、咬合の安定化や、咀嚼能力の回復ができるだけでなく、残存歯への力学的なストレスを軽減させることができる。これにより、さらなる歯の喪失の危険性も低減できる利点は大きい。 また、床義歯のわずらわしさや違物感、発音障害などがないため、歯の喪失による自己意識の低下を解消し、自信を取1992年4月CT撮影1993年9月左右側上部構造装着、治療終了2009年10月下顎前歯部インプラント埋入1992年9月右側上顎洞底挙上術1998年9月左側下顎インプラント埋入り戻せる場合が経験的に多い。しかしながら、インプラント治療を行う歯科医師にとっては、多くの症例で上顎臼歯部のインプラント手術には困難がともなう。それは、おもに上顎臼歯を抜歯した後の残存骨における骨量および骨質が他部位と比較して劣っていることに起因している。つまり、総じて残存骨の頬舌幅径はあるものの、高径が小さい場合(骨が薄い場合)が多いからである。 上顎洞底挙上術はサイナスリフトとして1978年にTatumによって報告された1が、1990年前後においても日本における症例報告は限られていた。筆者は1992年に自身初となる上顎2023年2月治療終了後2回目のCT撮影1992年10月左側上顎洞底挙上術2009年5月治療終了後1回目のCT撮影症例の概要と経緯群馬県開業:石倉歯科医院92Quintessence DENTAL Implantology─ 0092はじめに長期インプラント症例を再評価する─31年間の口腔と上顎洞内の変化をCT画像で追う─井汲憲治 Noriharu Ikumi1992年に上顎洞底挙上術を行った症例の長期予後

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る