高血圧狭心症病尿糖第1回高血圧編116Quintessence DENTAL Implantology─ 0116 インプラント治療を希望する患者の大部分は高齢で、何らかの全身疾患を有していることも稀ではありません。そのような患者に大量の局所麻酔薬を投与し、長時間にわたって観血的な処置を行うリスクを今一度考えてみませんか。 本連載では患者数が多く、しかもインプラント治療に関係の深い全身疾患を取り上げて、注意点やポイントについて述べていきます。第1回は高齢者の全身疾患の代表ともいうべき「高血圧」について取り上げます。 急激な血圧上昇によって脳、心臓、大血管などの重要臓器に障害をきたすことを「高血圧性緊急症」と呼びます(表1)。一般に収縮期血圧180mmHg以上あるいは拡張期血圧120mmHgを超えた場合に発症しやすいと考えられており、米国のガイドラインでも180/110mmHgを超えた場合は歯科治療を中止すると記載されています7。また、高度の高Basic高血圧の定義 日本高血圧学会では、収縮期血圧140mmHgまたは拡張期血圧90mmHgのどちらか片方を超えた場合を高血圧と呼んでいます。しかもこの基準は診療室で測定した場合であり、よりリラックスした環境である自宅で測定した場合は収縮期血圧135mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上3のどちらかを満たした場合と定義されています。さらに診療室での血圧が基準以下であっても家庭で測定した値が基準を超えていれば、やはり高血圧と診断されるのです。もちろんこれには根拠があって、これらの値を超えると脳・心臓・血管を原因とする死亡リスクが有意に上昇することがわかっているからです4〜6。 一方、高血圧であればインプラント治療を行ってはならないかといえば、もちろんそのようなことはありません。重要なのは、重要臓器に障害をきたす「高血圧性緊急症」を予防することです。BasicBasic高血圧患者は2人に1人 読者の皆さんは日本人の何割が高血圧に罹患しているかご存じでしょうか? 厚生労働省による令和元年の調査によれば、なんと20歳以上の2人に1人は高血圧なのだそうです1。さらにその中の半数は未治療であり、30%の患者は治療を受けているもののコントロール不十分といわれています2。インプラント対象者の年齢を考慮に入れると、読者の先生の診療室を訪れる患者の大半は高血圧と考えてもあながち誤りとはいえません。砂田勝久 Katsuhisa Sunada日本歯科大学 生命歯学部 歯科麻酔学講座こんな患者が来院したら─有病者のインプラント手術における全身管理─ はじめに高血圧の疫学と定義高血圧性緊急症と切迫症
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