Quintessence DENTAL Implantology 2024年No.2
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第1回インプラント周囲軟組織の役割と、軟組織マネジメントの重要性Advance12Soft Tissue Management108Quintessence DENTAL Implantology─ 0280 インプラントにおいて硬組織の重要性はいうまでもないが、近年軟組織の重要性も示されるようになってきている。たとえば2023年のITIコンセンサスミーティングでは、インプラント周囲の軟組織増生が1つのトピックとなっており1、2022年のDGI(ドイツインプラント学会)/SEPA(スペイン歯周病・オッセオインテグレーション協会)/OF(オステオロジー財団)によるコンセンサスミーティングはインプラント周囲軟組織に関してのトピックスのみで開催され2、2021年のEAOコンセンサスカンファレンスにおいても軟組織マネジメントがトピック3となっていることからも明白である。 インプラントの機能面、審美面を長期的に維持するためには、骨とインプラントのオッセオインテグレーションや硬組織のボリュームだけでなく、それを生物学的に守る軟組織による封鎖(ソフトティッシュインテグレーション)も重要である。軟組織マネジメントにより、インプラント周囲に角化粘膜を獲得することでブラッシング圧に抵抗力を持ち炎症が起きにくくする環境を整え、軟組織の高さと厚みを獲得することで、辺縁骨吸収や軟組織の退縮を防ぎ、審美性と清掃性にすぐれた補綴装置を装着し、長期的に健康を維持することが可能となる。 歯を失うと硬組織はリモデリングによりボリュームが減少4し、インプラントを補綴主導の位置に埋入するためには硬組織増生が必要となることが多い。また、歯を失うと軟組織にも変化があり、時間の経過とともに角化粘膜幅が減少し、下顎であれば軟組織の厚みが菲薄化する傾向があるという臨床実感がある(図1、2)。 さらに、インプラント治療を行うために失った硬組織を増生した場合には、水平骨膜減張切開をともなうフラップ減張図1 単独歯欠損。約20年前に抜歯しており、MGJ(歯肉‐歯槽粘膜境)が歯槽頂まで移動し角化粘膜がほとんど失われている。図2 複数歯連続欠損。歯槽堤のボリュームが大きく減少すると同時に角化粘膜がほとんど消失し菲薄化している。増田英人 Hideto Masuda大阪府開業:ますだ歯科医院連載を始めるにあたって令和版 軟組織のトリセツ抜歯後数十年経過した欠損歯槽堤

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