Quintessence DENTAL Implantology 2024年No.2
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要約目的:患者が有する疾患、処方されている薬剤、臨床的な要因などがインプラントの早期失敗と関連しているかについて調査する。材料および方法:本研究(ネステッドケースコントロール)では、インプラント埋入後6ヵ月までにインプラントの失敗が発生した患者を検索するため、電子カルテを使用した。患者データは2015〜2020年にかけてイスラエルの国営医療機関を受診した成人を対象とし、人口統計、臨床情報(インプラントの本数、部位、それらの組み合わせ)、基礎疾患(骨粗鬆症、糖尿病、高血圧、炎症性腸疾患[IBD]、心筋梗塞[MI])、薬物療法(ビスフォスフォネート製剤、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、降圧薬、プロトンポンプ阻害薬[PPI]、疾患修飾性抗リウマチ薬、副腎皮質ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬)などの情報を収集した。インプラント埋入後6ヵ月までに撤去を行った患者(症例群)と対照群が同等となるように1対1でマッチさせ、単変量解析および多変数調整された条件付きロジスティック回帰分析を用いて、インプラントリスク因子のオッズ比(OR)を検討した。結果:29,378名の患者の中からインプラントの失敗が生じた585名(平均年齢53歳[範囲42〜62歳]、女性51.3%、男性49.7%)が対象となった。対照群と比較して、インプラントの失敗を経験した患者には喫煙歴(18% vs 11.5%、P=0.009)があり、IBD(炎症性腸疾患:潰瘍性大腸炎、クローン病)(1.5% vs 0.02%、P=0.059[訳者注:有意差なし])の既往があり、インプラント手術の6ヵ月以内にPPI(40.0% vs 32.5%、P=0.028)を服用していた。臨床的な要因として、インプラントの本数(2本:OR=1.53、4本以上:OR=3.33;P<0.01)、インプラントの埋入部位(上顎:OR=1.59、95%信頼区間[CI]:1.2〜2.04)、喫煙(OR=1.57、95%CI:1.09〜2.26)が早期失敗の有意な相関因子であった。クローン病、心筋梗塞、骨粗鬆症は有意な相関を示す境界であった。結論:調査した要因の中で、インプラントの埋入本数、埋入部位、喫煙歴はインプラントの早期失敗の相関因子であったが、クローン病、心筋梗塞、骨粗鬆症は相関因子ではなかった。インプラントの早期失敗に及ぼす基礎疾患、薬剤、臨床因子などの個別的、複合的な影響については、より大規模な調査が必要である。 KEY WORDS:歯科インプラントの失敗、喫煙、クローン病、心筋梗塞、骨粗鬆症、上顎へのインプラントInt J Oral Maxillofac Implants. 2023;38(5):897–906.The International Journal ofOral&Maxillofacial ImplantsCorrelates of Early Dental Implant Failure:A Retrospective StudyBasson AA*/Mann J/Findler M/Chodick GFOCUS ON*連絡先:Ayelet Aviva Basson, HaHashmonaim 32, Ramat Gan 5248012, Israel. Email: ayeletbas@brandeis.edu146Quintessence DENTAL Implantology─ 0318訳/坂本安繁、鮎川保則九州大学大学院 歯学研究院 口腔機能修復学講座 インプラント・義歯補綴学分野インプラントの早期失敗と関連する要因:後ろ向き観察研究

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