第3回切開・剥離・縫合Basic切開とフラップデザイン インプラント治療に用いる粘膜の切開法は、歯槽頂切開(crestal incision、図3)と口腔前庭切開(vestibular in-cision、図4)がおもで、条件が良ければ歯肉パンチでの切開も可能である(図5)。かつてブローネマルクシステムのオリジナルプロトコルでは口腔前庭切開を推奨していたが、現在は骨増生などの2回法の手術においても歯槽頂切開と成功率の有意差は見出されないとの見解が多く、口腔前庭切開は外科侵襲も大きくなるため、筆者はすべての症例において歯槽頂切開で行っている。歯槽頂切開の縫合法 骨増生が必要な場合と十分な粘膜の幅がなく歯肉パンチで対応できない場合に歯槽頂切開を行う。実際の臨床では、ごくわずかな上顎臼歯部のケース以外は、歯槽頂切開で行うのが良いだろう。基本的にはインプラント体を埋入する位置の舌側に切開を入れて、頬側のフラップをインプラント体の頬側に移動させて縫合する。4〜5mm程度の粘膜幅があればパラッチの切開(図6)で行い、それ以下では頬側フラップを近心に移動させてインプラント体の頬側に固定する(図7)。Basic98Quintessence DENTAL Implantology─ 0442 第1回と第2回で基本の基本、麻酔法と姿勢、グリップ、インスツルメントについて解説してきた。切開線の設定や縫合方法を理解していても、いざやってみると、術野がよく見えない、想定したところにメスや針が到達しない、終わってみると「汚い」手術となった、また大きく腫れたり創面が開いてしまったりした時はないだろうか。実はその原因は、姿勢、グリップ、インスツルメントにあるかもしれない。筆者が偉そうに「そこは完璧だ」などとは到底言えないが、基本的なことに意識を向けることで無駄がなくなり、短時間でミスの少ない手術ができるようなったことを実感するので、連載2回分を割いて解説してきた。 この第3回からは、基本の「き」を押さえたうえで、症例を提示しながら実際の手術手技について解説していきたい。まずは、切開・剥離・縫合について詳説する。 新しい切れるメスを用いて一度で骨に達するまで切開することが重要である。骨に当たって切れなくなったらメスは新しい物に替えるほうがよい。同じ部位で浅層から深層にメスを何度かに分けて入れたりすると切断面が不揃いになり、傷の裂開、後出血、瘢痕の原因になるので、一ヵ所一度の切開で確実に骨膜まで切開する。メスは骨面に対して垂直に当て、切断された軟組織の断端が直角になるように運んでいく。先細りになった軟組織断端は縫合しても血流不足になって糸が切れたり傷が開いたりするリスクが高い(図1、2)。白鳥清人 Kiyoto Shiratori静岡県開業:医療法人社団 白鳥歯科はじめに切開の基本動画で学ぶ インプラント外科 基本の「き」
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