Quintessence DENTAL Implantology 2024年No.3
7/9

第2回角化粘膜を守る手技リッジプリザベーション 前回は本連載の概略をお伝えしたが、今回からは各論に移りたい。まずは非審美領域における軟組織マネジメントについてである。本連載では審美領域、非審美領域という分け方をしている。前歯・臼歯という分け方にしていないのは、どの範囲を審美領域とみなすかは患者ごとに異なると考えているからであり、筆者の中では通常₅~₅(特に₃~₃)を審美領域1としたうえで、患者に合わせて柔軟に対応している。Advance 抜歯にともなう硬・軟組織の寸法変化は避けられない生物学的な反応である。Tanらによるシステマティックレビューでは、硬組織は抜歯後半年で、水平的に平均3.79mm(29〜63%)、垂直的にも平均1.24mm(11〜22%)吸収することが示され2、またそのほとんどが3ヵ月で起こるとされている3。一方、Iasellaらによると、軟組織は抜歯後半年で頬側・口蓋側の粘膜の厚みが0.4〜0.5mm増すことが示されている4。 軟組織に関しては長期的にみると時間の経過とともに歯肉‐歯槽粘膜境(MGJ)が歯冠側移動し角化粘膜幅が少なくなることが多いという筆者の臨床実感があるが、軟組織が長期的にどのような変化を示すかというエビデンスは残念ながAdvanceAdvanceSoft Tissue Managementら皆無といえる。硬組織の吸収が起きた後にインプラント治療を行う場合には、まず硬組織増生が必要となることが多い。その場合、硬組織増生を成功させる原則であるPASSの法則5に沿ってテンションフリーでのフラップの閉創を行うためには、縦切開および水平骨膜減張切開によるフラップの減張が必須となる。その結果、MGJは歯冠側に牽引され欠損部の角化粘膜をさらに失うこととなる。そうなるとインプラント周囲に2mm以上の角化粘膜を獲得し、3〜4mmの軟組織の高さを得るためにはさまざまな軟組織マネジメントが必要となってくる。 図1のような治療を日常では繰り返しているが、複数回の外科処置、手術の侵襲など患者にとってやさしい治療とはいえないだろう。本問題を軽減するために効果的な手法がリッジプリザベーションである。 本稿ではリッジプリザベーション=ソケットグラフトとして解説する。リッジプリザベーションは抜歯窩に骨補填材を充填し、何らかの方法でその上をシールすることで抜歯後のリモデリングによる硬組織のボリューム減少を軽減させる方法である(図2、3)。リッジプリザベーションに関してはさまざまな研究結果から以前と考え方や手法が変遷してきているため、近年のシステマティックレビュー・メタ分析とコンセンサスレポートによって現時点でわかっている効果を理解112Quintessence DENTAL Implantology─ 0456増田英人 Hideto Masuda大阪府開業:ますだ歯科医院はじめに抜歯後の硬・軟組織の変化に関して非審美領域のリッジプリザベーション令和版 軟組織のトリセツ

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る